塩は欠かせない調味料として、家庭でごく一般的に使われるものです。
天然塩であればミネラルを含み、人間の生命活動にも重要な役割を果たします。
健康的な生活を送る上で「塩」の選び方を知っておくことはとても大事。
調味料として取り入れやすいのも、一番身近にある「塩」と言えるでしょう。
今回はそんな「塩」について、「精製された塩」と「精製されていない天然塩」の見分け方と共に、違いや特徴について解説します。
この記事でわかること
精製塩と天然塩の製造方法
精製(特定の成分を取り出す為の加工工程)された塩の事を一般的に「食塩」と呼び、店頭で一番多く取り扱われています。
特にこだわりなく買ってきた塩を使っている場合は大抵「精製塩」ではないでしょうか。
この精製塩の他に、天然塩(自然に近い塩)と、再生加工塩(精製塩・輸入塩に後からミネラルなどの栄養素を人工的に添加した塩)があります。
それぞれの特徴と製造方法を見ていきましょう。
精製塩(精製された塩)
精製塩とは、精製された塩のことを指し、塩の主成分である塩化ナトリウムの純度を高めるために工場で加工・精製された製品のことを指します。
精製塩は、99%以上が塩化ナトリウムで構成されており、不純物やミネラルをほとんど含まないのが特徴です。
精製塩の製造方法
精製塩は原材料として、主に海水・岩塩・湖塩が使われますが、日本では海水を使用するのが一般的です。
日本での精製塩の製造工法として、イオン膜を利用する「イオン交換膜法」、釜で海水を直接煮詰める「立釜法」、天日塩や岩塩を水に溶かして濃い塩水を作り、再び煮つめて再結晶化させる「溶解再結晶法」があります。
再生加工塩(塩の精製途中で後からミネラルなどの成分を添加した塩)は「溶解再結晶法」によって作られます。
精製塩は、工場で大量生産が可能なので、安価で手に入りやすく、さらさらとして溶けやすいので、食品加工・料理や食卓塩として様々な用途で広く使われています。
メリット
さらさらしていて使いやすい(湿気を吸いにくい)
価格が安く、手に入りやすい
食品加工や工業用に適している
デメリット
ミネラルをほとんど含まれないので、健康効果が少ない
塩味が強く、まろやかさがないので、料理によっては味が単調になる
ナトリウム過多になりやすく、高血圧のリスクがある
天然塩(自然に近い塩)
天然塩とは自然の製法で作られた塩で、人工的な精製をほとんど行わず、海水や岩塩などの自然由来のミネラルを含んだ塩のことを指します。
工場で精製された精製塩と異なり、ミネラルが豊富で風味が豊かなのが特徴です。
天然塩の主な種類と製造方法
天然塩には、大きく分けて3つの種類があります。
①海塩(かいえん)
海水を原料とする塩で、日本の天然塩の多くはこの方法で作られています。
天日塩(てんぴえん) | 釜炊き塩(かまたきえん) |
海水を塩田に引き込み、太陽と風の力で水分を蒸発させます。 | 海水を煮詰めて水分を蒸発させ、塩を結晶化させます。 |
特徴:ミネラルが豊富で、甘みや旨味を感じます。粒が大きめで、しっとりした質感があります。 |
② 岩塩(がんえん)
地中に埋まっている古代の塩の層(岩塩層)から採掘して作られる塩です。
太古の海が地殻変動で閉じ込められ、長い時間をかけて塩の層が形成されます。
特徴:鉄分やカルシウムを含み、ピンクや黒など色がついているものもあります。しっかりとした塩味があり、ミルで削るタイプが多く出回っています。 |
③ 湖塩(こえん)
塩湖(えんこ)に含まれる塩分を結晶化させた塩です。
海から離れた内陸部にある湖の水が蒸発し、塩が堆積したもの。
特徴:ミネラルバランスが良く、まろやかな味わい。非常に細かい粒子のものが多い。 |
天然塩と精製塩の違い
天然の塩(自然塩) | 精製された塩 | |
---|---|---|
製造方法 | 自然の力(天日干し、釜炊き、採掘) | 工業的な精製(イオン交換膜法) |
主成分 | 塩化ナトリウム + ミネラル(マグネシウム、カリウム、カルシウム) | 99%以上が塩化ナトリウム(NaCl) |
味 | まろやかで甘みや旨味がある | シンプルな塩味 |
質感 | しっとり、ザラザラ | さらさら |
用途 | 料理の仕上げ、特別な味付け | 一般的な調理、食品加工 |
精製塩と天然塩の栄養価の違い
精製塩が「体に悪い」と言われる理由
精製塩は、日本の一般的な食卓塩として広く使われていますが、「精製塩は体に悪い」と言われることがあります。
その主な理由は、ナトリウムと塩化物(NaCl)がほぼ100%でミネラル(マグネシウムやカリウムなど)がほとんど含まれていないという点です。
ナトリウムの過剰摂取は、高血圧(血液中のナトリウム濃度が上昇し、体内の水分保持の為、血圧が上昇する)、長期的には心疾患や脳卒中のリスクが高まります。
更にナトリウムを排出しようとする腎臓への負担も懸念され、むくみの原因や腎臓病への心配が生まれます。
これは塩化ナトリウムが毒なのではなく、塩化ナトリウムだけを取り出すことによって、成分のバランスが崩れることが問題だと言えます。
さらに、味が単調なので摂取過多になりやすいという意見もあります。
精製する過程でミネラルなどを添加する「再生加工塩」は天然塩と精製塩の中間的な存在として考えられていますが、天然塩と比べてミネラルが少なくなっています。
一度溶かして再結晶化する過程でミネラルが減少し、特にマグネシウムやカリウム、カルシウムなどの微量ミネラルが失われるので、栄養価は精製塩より高いものの、天然塩のミネラル含有量から比べるとやや劣る、と言えるでしょう。
天然塩が「体に良い」と言われる理由
天然塩は精製塩と違い、ミネラルを豊富に含んでいるため「体に良い」とされ、特に、カリウム・マグネシウム・カルシウムなどのミネラルは、体のバランスを整える役割を持ち、健康面でのメリットが期待されています。
天然塩はミネラルのバランスが良く、カリウムやマグネシウムが含まれているため、ナトリウムを適度に排出する作用があり、ナトリウム過多を防ぐ働きがあります。
ミネラル | 期待される健康効果 |
---|---|
カリウム(K) | 余分なナトリウムを排出し、血圧を下げる |
マグネシウム(Mg) | 神経や筋肉の働きを整え、便秘解消にも役立つ |
カルシウム(Ca) | 骨や歯を強化し、ストレス軽減にも効果的 |
鉄分(Fe) | 貧血予防に役立つ |
上記のように豊富なミネラルを含み、体内のミネラルバランスを整えることが、「天然塩が体に良い」とされる理由ではないでしょうか。
また、天然塩は精製塩に比べ、まろやかな旨味を感じられ、少量でも満足感を得られるので塩分の過剰摂取を防ぐことができると考えられます。
精製塩と天然塩の栄養価の違い
項目 | 精製塩 | 天然塩 |
---|---|---|
ナトリウム含有量 | 約99%以上 | 約80~95% |
ミネラル含有量 | ほぼゼロ | カリウム・マグネシウム・カルシウム含む |
味の特徴 | シンプルで強いしょっぱさ | まろやかで甘みがある |
健康リスク | ナトリウム過剰摂取の可能性 | ミネラルバランスが良い |
おすすめの使い方 | 工業用・加工食品向け | 料理・健康志向向け |
精製塩と天然塩の見分け方
精製塩と天然塩を見分けるには、商品の裏の表記を見て下さい。
天然塩と書かれていても、実際は再生加工塩だということもあるので注意が必要です。
※再生加工塩:精製塩・輸入塩に後からミネラルなどの栄養素を人工的に添加した塩。
表記の仕方 | 工程 | ||
精製塩の表記 | 「イオン膜」「立釜」「塩化ナトリウム99%以上」 | ||
天然塩の表記 | 天然塩に正確な定義は無いものの、原材料の他に、工程は「天日」「乾燥」「粉砕」「平窯」の記載のみで他の工程が書かれていない | 平窯 | 日本の伝統的な製法で海水を煮詰めて結晶化させる |
天日 | 海水を塩田にまいて天日干しして結晶化させる | ||
粉砕 | 岩塩や結晶化したものを砕いて使いやすい粒にする | ||
再生加工塩の表記 | 「天然塩」の表示の後に「海水」「ニガリ」などの記載 | 「溶解」「混合」などの記載 |
まとめ
精製塩は塩化ナトリウムの割合が高すぎるので、過剰摂取になりやすい。
天然塩はミネラルが多く含まれているのでバランスが良く、塩化ナトリウムを排出する働きもあって過剰摂取になりにくい。
天然塩は旨味を感じられる「美味しい塩」は、使いすぎを防ぎ、結果的に健康に良い影響を与える。
健康を意識するなら「天然塩」「ミネラルを含む塩」。
精製塩の表記:「イオン膜」「立釜」「塩化ナトリウム99%以上」
天然塩の表記:原材料の他に、工程は「天日」「乾燥」「粉砕」「平窯」の記載のみ。
再生加工塩の表記:原料「天然塩」の表示の後に「海水」「ニガリ」また、工程が「溶解」「混合」の記載。
・公益財団法人塩事業センター「塩百科」