揚げ物や炒め物、カレーに焼きそばからお好み焼きまで、さまざまな料理に使われる「サラダ油」。
料理の他にも、ドレッシングやマヨネーズなどの加工食品の材料にもなっています。
そんな日本人の生活に馴染み深いサラダ油ですが、製品によっては動脈硬化の原因のひとつ「トランス脂肪酸」を含んでおり、注意が必要です。
日々の食生活で切っても切り離せない油だけに、健康に良いサラダ油を選びたいものです。
そこで今回は、サラダ油の特徴や原料、他の油との違いを読み解きながら、リスクの低い商品の選び方、そして安全なサラダ油をご紹介します。
安全なおすすめサラダ油 | |||||||||||
製品名 | オーサワのなたねサラダ油 | 鹿北製油 国産 なたね油 | 平田産業 国産なたね油 | ビオプラネット 有機なたね油 | 坂本製油 純なたね油 | OMEGAファーマーズ 国産菜種油 | ムソー 純正なたねサラダ油 | プレマラボ 和の玄米オイル | 築野食品工業 国産こめ油 | メリリマ 米ぬか油 | 三和油脂 コメーユ |
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メーカー | オーサワジャパン | 鹿北製油 | 平田産業 | ビオプラネット | 坂本製油 | OMEGAファーマーズ | ムソー | プレマラボ | 築野食品工業 | メリリマ | 三和油脂 |
製造法 | 圧搾一番搾り製法 | 圧搾一番搾り製法 | 圧搾一番搾り製法 | 低温圧搾 | 古式圧搾製法 | 低温圧搾 | 圧搾一番搾り製法 | 低温圧搾 | 圧搾製法 | 低温抽出 | 圧搾製法 |
原材料 | 遺伝子組換えでない菜種 | 遺伝子組換えでない菜種 | 国産菜種「キザキノナタネ」 | 有機食用なたね | 遺伝子組換えでない菜種 | 北海道産「キザキノナタネ」菜種 | 遺伝子組換えでない菜種 | 無農薬栽培玄米の米ぬか | 国産米ぬか | 国産米ぬか | 国産米ぬか |
原産地 | オーストラリア | 鹿児島・宮崎・福岡 | 日本 | オランダ | オーストラリア | 北海道 | オーストラリア | 北海道・東北 | 北陸・中部・近畿・中国・四国 | 中部地方 | 日本 |
購入 |
サラダ油とは?
サラダ油は、アブラナやひまわり、大豆、とうもろこし、胡麻などを原料として精製された植物油の総称です。
ですから、スーパーでよく見かけるなたね油や、キャノーラ油、米油などは全て「サラダ油」に含まれます。
サラダ油は植物の種子などを原料とた食用植物油脂の中でも、精製度が高く低温環境でも白く濁ったり、固まることのない油を指します。
大正時代に日清オイリオがサラダなどに使えるサラサラしたオイルを「サラダ油」と命名し売り出したのが起源とされており、現在は日本農林規格(JAS)の定める原材料を使い、JAS認定工場で作られたもののみ「サラダ油」として販売できます。(※1)
サラダ油の成分と製造方法
先述したように、サラダ油の原料は主に穀物の種子です。
ひまわり油はひまわりの種子を、なたね油は菜種を圧搾・抽出して作られます。他にも米ぬかや米胚芽を利用した米油や、ワインの製造過程で出るぶどうの種子から作られるグレープシードオイルなどもあります。
単一の原材料だけでなく、菜種油と大豆油といった2種類以上の原料をブレンドした「調合サラダ油」、カナダ原産のキャノーラ種から搾った「キャノーラ油」もサラダ油の一種です。
サラダ油の種類 | 原料 |
---|---|
サフラワーサラダ油 | ベニバナの種子 |
ぶどうサラダ油(グレープシードオイル) | ヨーロッパブドウの種子 |
大豆サラダ油 | 大豆の種子 |
ひまわりサラダ油 | ひまわりの種子 |
とうもろこしサラダ油(コーン油) | トウモロコシの胚芽 |
綿実サラダ油 | ワタの種子 |
ごまサラダ油 | ゴマの種子 |
なたねサラダ油 | セイヨウアブラナ(菜の花)の種子 |
こめサラダ油 | 米ぬか |
調合サラダ油 | 大豆油、菜種油など複数の植物油 |
サラダ油に含まれる不飽和脂肪酸とは?
脂質の主成分である脂肪酸には「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」の2種類があり、栄養素としての役割がそれぞれ異なります。
この二つの脂肪酸は他の多くの脂肪酸とは異なり体内で合成することができないので、食事から摂取する必要があります。
不飽和脂肪酸は主に青魚や植物油、ナッツなどに含まれる脂肪酸で、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸)に大別され、抗炎症作用や心血管保護などの効果を持ちます。
それぞれの脂肪酸の特徴は以下です。
分類 | 特徴 | 主な健康効果 | 主な食品例 | 推奨される摂取バランス(総エネルギー100%) | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
一価不飽和脂肪酸(MUFA) | 酸化に比較的強く、主にサラダのドレッシングや炒め物などに使われ、高温調理に適しており、調理用油として利用します。 | 悪玉コレステロール(LDL)を低下させ、心血管疾患のリスク軽減に役立ちます。 | オリーブオイル、キャノーラ油、ピーナッツ油、アボカド、アーモンド、ヘーゼルナッツ | 10~15% | ||||
多価不飽和脂肪酸(PUFA) | オメガ3脂肪酸(n-3) | 酸化されやすく、熱に弱いため、非加熱の状態で摂取します。 | 炭素鎖の末端(メチル基側)から3番目に二重結合を持ちます。 | 細胞膜の流動性や代謝に関与し、必須脂肪酸として欠かせない脂肪酸です。細胞機能、炎症反応の調整、成長を助けます。 | 抗炎症作用があり、心血管疾患の予防や認知機能の向上に寄与します。視力や脳の発達に重要な栄養素です。また、血液中のトリグリセリド(中性脂肪)を低下させる作用もあります。 | 青魚(サバ、イワシ)、亜麻仁油、チアシード、クルミ | 6~11% | 5~8% |
オメガ6脂肪酸(n-6) | 炭素鎖の末端(メチル基側)から6番目に二重結合を持ちます。 | 細胞膜の安定化、成長や免疫機能の維持。ただし過剰摂取すると炎症や生活習慣病のリスクが高まるため、オメガ3脂肪酸とのバランスが重要です。 | ごま油、コーン油、大豆油、ひまわり油 | 0.5~2% |
サフラワー油やひまわり油、ごま油などの植物油はオメガ6脂肪酸(リノール酸など)を多く含み、細胞膜の形成や成長を助けますが、オメガ6脂肪酸は炎症を促進するのに対し、オメガ3脂肪酸は炎症を抑制するため、バランス(オメガ6:オメガ3は、4:1〜2:1が理想)が重要です。
西洋型の食生活はオメガ6脂肪酸が過剰摂取(現代の西洋型食生活では7:1以上)になりがちなので、積極的にオメガ3脂肪酸を含む食品の摂取が推奨されています。
サラダ油の製造方法
なたね油、キャノーラ油、こめ油などのサラダ油は、それぞれの原料を圧搾・加熱して油を抽出します。
1. 菜種(なたね)やキャノーラ種子から、サヤや茎、ゴミなどの異物を取り除きます。
2. 種子に高圧力をかけて油を搾り出します。
3. ヘキサンという溶剤(※2)を加え、残留油分を抽出します。
4. 溶剤が混ざった油分を加熱し、ヘキサンを揮発させて除去します。
5. 搾油・抽出で作られた油は、不純物や色素、臭いなどが含まれているため、化学的な処理を加え精製します。
6. ろ紙を使って油をろ過し、微細な不純物を取り除きます。
キャノーラ油とサラダ油の違い
スーパーの家庭用サラダ油コーナーを見ると、サラダ油の他に、キャノーラ油と書かれた油をよく見かけます。
先述したように、キャノーラ油もサラダ油のひとつで、品種改良された菜種から作られます。
市販の多くのサラダ油は、一般的に菜種油、大豆油、ひまわり油、コーン油などを混合して作られ、特定の原料に依存せず、混合比率や油種はメーカーによって異なります。
一方、キャノーラ油はカナダで品種改良されたキャノーラ種の菜種のみを使って製造されます。
キャノーラ油はエルカ酸(※3)の含有量が0.1%以下で、他の菜種油より低エルカ酸・低グルコシノレートが特徴です。(キャノーラは「Canadian Oil Low Acid”」の略)
キャノーラ油とサラダ油の成分の違い
市販のサラダ油は、大豆油などをブレンドして製造されることが多く、そのためリノール酸(多価不飽和脂肪酸)の含有量が増え、酸化しやすい傾向があります。
キャノーラ油はオレイン酸(一価不飽和脂肪酸)の割合が高く、酸化しにくい傾向があります。
また、キャノーラ油は、リノール酸とα-リノレン酸(オメガ3脂肪酸)のバランスが良く、炎症を抑える作用が期待されます。
サラダ油(大豆油・菜種油のブレンド油) | キャノーラ油 | |
---|---|---|
オレイン酸(MUFA) | 約25~40% | 約60~65% |
リノール酸(n-6) | 約50%(大豆油が多い場合) | 約20~25% |
α-リノレン酸(n-3) | 約7~8%(菜種油が多い場合) | 約8~12% |
飽和脂肪酸 | 約10~15% | 約6~8% |
エルカ酸 | キャノーラ種でない菜種油には1~5%含有 | 0.1%以下 |
キャノーラ油とサラダ油の用途
一般的なサラダ油 | キャノーラ油 | |
---|---|---|
風味 | ほぼ無味無臭で、サラッとした風味。揚げ物や炒め物、ドレッシングなど幅広い用途に使用可能。 | かすかな風味を残しつつ、味や香りにはくせがなく、さまざまな料理に馴染む。 |
用途 | 酸化しやすいので生食に向いており、低温でも固まらない。 | 生食・加熱調理ともに利用できる。オメガ3脂肪酸を含むため健康志向。 |
主な栄養素 | リノール酸の割合が高い | オレイン酸の割合が高い |
サラダ油は体に悪い?
サラダ油は、他の油に比べて体に悪いという声をよく聞きます。
特に健康志向の方などは、オリーブオイルや亜麻仁油などを選んで、サラダ油は敬遠されることが多いように思います。
なぜサラダ油は体に悪いと言われるのでしょうか。ここでは、サラダ油が体に与える影響や、健康に悪いとされる理由やその根拠を解説します。
製造過程でのトランス脂肪酸の生成
サラダ油の成分と製造方法でも書いたように、サラダ油の製造工程において、原料から油を搾り出した後、脱ガム処理(精製過程)、さらに油脂などから好ましくない臭いを取り除くために「脱臭工程」を行います。
この過程で、高温の水蒸気(200度〜260度)を油に吹き込むため、油中のシス型不飽和脂肪酸の一部がトランス型に変化し、トランス脂肪酸が生成されると言われています。
特に 大豆油、コーン油、ひまわり油などの多価不飽和脂肪酸を多く含む油は、熱によるトランス脂肪酸の生成リスクが高くなります。
総エネルギー摂取量の1~3%をトランス脂肪酸が占めた場合、冠状動脈性心疾患のリスクが顕著に増加することがわかっています。
リノール酸の過剰摂取
サラダ油(とうもろこし油、大豆油など)に多く含まれるリノール酸(オメガ6脂肪酸)は必須脂肪酸の一つで、適度な摂取は健康に利点がありますが、過剰に摂取すると体内で炎症を促進するエイコサノイドの生成が増加し、心血管疾患、がんなどの慢性疾患のリスクが上昇する可能性が示唆されています。(※4-5)
しかし、リノール酸の大量摂取と炎症の増加に関連性は見られないとされる研究(※5)もあり、リノール酸の健康リスクについては継続的な研究が必要です。
酸化による有害物質の生成
リノール酸を多く含むサラダ油(大豆油などのブレンド)は、不飽和度が高いため、加熱によって酸化しやすい性質を持ちます。特に高温での揚げ物や長時間の加熱調理は注意が必要です。
酸化が進行すると、ヒドロキシノネナール(HNE)などの有害なアルデヒドが生成され、それらは発がん性、神経毒性を持つとされています。
※5 Linoleic Acid: A Narrative Review of the Effects of Increased Intake in the Standard American Diet and Associations with Chronic Disease
※6 Linoleic Acid: A Nutritional Quandary
エルカ酸のリスク
エルカ酸は、キャノーラ油とサラダ油の違いでも書いたように、菜種油に含まれる脂肪酸で、動物実験により心臓への毒性が指摘されています。
ただし、ヒトへの悪影響は確認されておらず、詳細な研究が待たれます。さらに一般的な菜種油と比べ、キャノーラ油に含まれるエルカ酸の量は非常に低く、通常の使用量であれば問題はないとされています。(※7)
キャノーラ油におけるアルツハイマー病のリスク
米国テンプル大学のマウスを用いた研究では、キャノーラ油の摂取が脳内のアミロイドβ42の蓄積を増加させ、学習能力と記憶力の低下、及び体重増加を引き起こすことが報告されており、キャノーラ油とアルツハイマー病のリスク増加の関連性が示唆されています。(※8)
ただし、この研究はあくまで動物実験であり、キャノーラ油の人間に対する影響を直接示すものではなく、ヒトにおけるリスクを明確にするためには、さらに研究が必要とのことです。
トランス脂肪酸の健康リスク
心血管疾患のリスク増加
トランス脂肪酸の摂取は、血中の悪玉コレステロールを増加させ、善玉コレステロールを減少させることが報告されています。
これにより、動脈硬化の進行や冠動脈性心疾患のリスクが高まるとされています。いくつかの大規模コホート研究で、トランス脂肪酸の摂取が冠動脈性心疾患のリスクを増加させることが示されています。(※9, ※12)
炎症促進
トランス脂肪酸の摂取は、体内の炎症マーカーであるC反応性タンパク質(CRP)のレベルを上昇させることが報告されています。
CRPの増加は、慢性炎症の指標とされ、糖尿病やメタボリックシンドロームを引き起こすとされています。
したがってトランス脂肪酸の過剰摂取は、インスリン抵抗性の悪化、糖尿病リスクの増加と関連していると考えられています。(※10, ※12)
神経・脳機能への影響
一部の研究では、トランス脂肪酸が神経細胞の炎症を促進し、酸化ストレスを増加させることから、アルツハイマー病や認知機能低下の懸念があるとされています。(※11)
ただし、この分野の研究はまだ初期段階であり、さらなる検証が必要です。
肝機能やホルモンバランスへの影響
トランス脂肪酸は肝臓の脂質代謝を乱し、脂肪肝のリスクを高めと言われています。
さらにホルモン分泌を乱す可能性があり、特に妊婦や成長期の子どもへの影響が懸念されています。
このようにトランス脂肪酸の摂取が多い人は、2型糖尿病のリスク増加上昇、アルツハイマー病、がん、肝機能障害、不妊症、うつ病など、さまざまな疾患と関連している可能性があります。
マーガリンやショートニングなどの製品では、液体の植物油を固体にするために、水素添加を行うことがあります。この工程で、不飽和脂肪酸の二重結合に水素を付加し、油脂の融点を上げ、さらに酸化による劣化を防止します。しかし、この過程で、シス型の不飽和脂肪酸がトランス型に変化し、トランス脂肪酸が生成されます。(※12)
※10 Trans fatty acids: effects on metabolic syndrome, heart disease and diabetes
※11 Dietary Fats and the Risk of Incident Alzheimer Disease
※12 すぐにわかるトランス脂肪酸(農林水産省)
安全なサラダ油の選び方
サラダ油の種類や、健康への影響・製造過程におけるリスクをみてきました。
サラダ油と一口に言ってもさまざまな原料から作られており、サラダ油の種類によって製造法をはじめ、含まれる脂肪酸の種類や効能も異なります。
この項では、健康リスクの少ない安全なサラダ油の選び方を解説します。
油の搾り方を確認し「圧搾法」を選ぶ
植物油の搾り方には大まかに分けて、以下の3種類の方法があります。
①圧搾法
②抽出法
③圧抽法(圧搾法+抽出法)
①圧搾法
圧搾法は、原料に物理的な圧力をかけて油を搾り出す製造法です。
主に油分の多い原料に向いていますが、製造に時間がかかり、さらに搾りかすが残留してしまうので抽出できる油の量が少なく割高です。
しかし、脱臭や脱色などの工程を行わないので、原料が本来持つ栄養や香りが損なわれず、自然の風味が楽しめます。
②抽出法
抽出法は、ヘキサンという化学溶剤を使って脂肪分を溶かし油を抽出する方法で、大豆・米ぬか、綿実など油分の少ない原料に使われる製法です。
原材料の油分を余すことなく搾り取ることができるので、生産性が高く、安価な油を作ることができます。
油分をほぼ100%抽出できるため、コストが安く大量生産に向いています。
③圧抽法(圧搾法+抽出法)
圧抽法は、圧搾によって搾油した後、採りきれなかった原料の油(1割から2割の残油)を抽出法によって、最後まで絞り出す製法です。
圧搾法と抽出法を併用した方法で、菜種などの油分の多い原材料に使われます。
市販のキャノーラ油をはじめとしたサラダ油の多くは、この製造法が採用されています。
以下は、それぞれの製造法の特徴やメリットとデメリットをまとめたものです。
搾り方 | 特徴 | メリット | デメリット | 主な植物油 |
---|---|---|---|---|
圧搾法 | 圧力をかけて油を搾る / 油分の多い原料に使われる | 風味・栄養が残る / 溶剤不使用で、精製工程が少なく、トランス脂肪酸の発生リスクが低い | 搾油効率が低い / 高コスト | なたね油(圧搾) / ごま油 / オリーブ油 |
抽出法 | ヘキサンなどの溶剤を使用して油を搾る / 油分の少ない原料に適している | 大量生産が可能 / コストが安い | 化学処理・高温処理で風味が損なわれる / 酸化リスク、トランス脂肪酸の生成リスク | 大豆油 / コーン油 / 米ぬか油 |
圧抽法 | 圧搾 + 溶剤抽出 / 油分の多い原料に適用 / 圧搾のみでは採りきれない油分を化学溶剤を使って採取し、効率を最大化 | 効率よく油を採取できる | 一部化学処理を行う / 高温処理を伴うため、一部の栄養素や風味が損なわれる | キャノーラ油 / ひまわり油 |
現在スーパーなどで売られているサラダ油の大半が、圧抽法で製造されています。
抽出法や圧抽法によって搾り取られた油は、先述したようにヘキサンなどの有機溶剤が使われています。
製造プロセスで溶剤は除去されますが、微量の溶剤が残留する可能性があります。
また高温処理や精製過程において、ビタミンEやフィトステロールなどの有益な成分が損なれ、微量のトランス脂肪酸が生成されます。
以下の表は主なサラダ油メーカーの商品におけるトランス脂肪酸含有率です。
メーカー | 製品名 | トランス脂肪酸含有量(g/100g) |
---|---|---|
日清オイリオ | 日清サラダ油 | 1.2 |
日清キャノーラ油 | 0.8 | |
日清一番搾りべに花油 | 0.1未満 | |
MCTリセッタ | 0.8 | |
日清こめ油 | 0.3 | |
日清アマニ油 | 0.3 | |
ボスコエキストラバージンオリーブオイル | 0.1未満 | |
日清ヘルシーごま香油 | 0.6 | |
J-オイルミルズ | AJINOMOTOサラダ油TUP | 1.2 |
AJINOMOTOさらさらキャノーラ油 | 0.8 | |
AJINOMOTOオリーブオイルエクストラバージン | 0.1未満 | |
昭和産業 | 昭和サラダ油 | 0.9 |
キャノーラ油 | 0.8 | |
オレインリッチ | 0.2 | |
一番搾りべに花油 | 0.3 | |
健康こめ油 | 0.5 | |
ひまわり&オリーブオイル | 0.1 |
日清オイリオ:トランス脂肪酸の分析値(2023年4月) / J-オイルミルズ株式会社:トランス脂肪酸の分析値(2024年3月分析例) / 昭和産業:基準油脂分析試験法による自社分析値(2022年、2023年分析例)
以上のリスクを考慮し、製造法は「圧搾法」を選びましょう。特に低温でゆっくり圧搾する「低温圧搾法」は、栄養価が維持されるため、品質や健康面を重視する方におすすめです。
低温圧搾法とは?
低温圧搾法(コールドプレス)で製造された油は、原料を低温(27度以下)に保ちながら時間をかけて圧搾するので、通常の圧搾法と比べ油の栄養素が保持され、高熱処理による酸化もされにくく品質の高い植物油とされています。高品質なオリーブオイル、亜麻仁油、えごま油などの製造に使われます。ただし、低温圧搾法は圧搾法の中でもさらに採油効率が低く、大量生産が困難であるため高価格の傾向にあります。
「化学溶剤を使っていない」ものを選ぶ
油の搾り方の項目でも書いた通り、「抽出法」や「圧抽法」で油を抽出する場合、ヘキサンという化学溶剤を使用します。
油を抽出した後、蒸留装置を使って溶剤のみ揮発させますが、微量の溶剤が油に残ってしまう恐れがあります。
また、気化した溶剤成分は商品に残留しないという理由で、サラダ油の原料表示に化学溶剤の表示義務は課せられていないので、化学溶剤不使用の油を選ぶ場合は、製造・精製法を確認しましょう。
「精製に化学薬品を使っていない」ものを選ぶ
搾り取った油には不純物が含まれており、不純物や色素、臭い成分を取り除きます。
一般的にこの精製工程にリン酸、シュウ酸、苛性ソーダなどの化学薬品が使われます。
これらの化学薬品の使用は、精製後の油の栄養価や風味を損い、さらに残留した添加物によって動脈硬化リスクや、消化器系の障害が懸念されます。
活性白土処理や、湯洗い、遠心分離などの、できるだけ化学薬品を使用しないで精製された油を選びましょう。
原材料は「遺伝子組み換えでない」ものを選ぶ
サラダ油の主な原材料である菜種や大豆は、カナダ、オーストラリア、アメリカなどの国外産が多く、その原材料のほとんどが「遺伝子組み換え不分別」の原料を使っています。
「遺伝子組み換え不分別」とは、生産・流通・製造・加工の全プロセスで、遺伝子組換え食品が混入しないように「分別して管理していない」という意味なので、大豆や菜種が輸入品の場合、遺伝子組み換えの作物が使われている可能性が高いと言えます。
「どのような原料で食用油を製造していますか」という質問に対し、日清オイリオとJ-オイルミルズ、そして辻製油が「遺伝子組み換え不分別の原料」と回答。不二製油、昭和産業、ボーソー油脂は「一部の製品で遺伝子組み換えでない原料」と回答。平田産業、米澤製油、創健社、ムソーは「全ての製品で遺伝子組み換えでない原料」と回答しました。
遺伝子組み換え作物が使われている商品には、「遺伝子組み換え」「遺伝子組換え不分別」等の表示が義務付けられていますが、食用油は対象外で表示義務が課せられていません。
「遺伝子組み換えでない」原材料の食用油を選ぶ際は、「国産」または、日本で遺伝子組み換え作物の流通が許可されていない原材料(オリーブ、ごま等)の油を選びましょう。
また、「有機JAS認証」を受けた商品は、遺伝子組み換え作物不使用であるため安心です。
「食品添加物が入っていない」ものを選ぶ
国内で流通しているJAS規格の食用油では、使用可能な食品添加物が規定されています。
家庭向けの食用植物油では、天然型のビタミンE以外の食用添加物は一切使用できません。(※13)
ただし業務用として売られている製品(内容量が4kg以上のもの)に関しては微量の消泡剤(シリコーン樹脂)の添加が許可されているそうです。
ですから、業務用スーパーなどで売られている容量の多い植物油を購入する場合は注意が必要です。
参考:JAS規格(日本油脂検査協会 / 食用植物油脂の安全性のチェック(日本植物油協会)
「調理方法に適した」油を選ぶ
料理によって合う油を選ぶ方は多いと思いますが、油の特性によっても「加熱に向いている油」と「加熱に向いていない油」があります。
酸化しやすい油は、強い熱を加える料理には不向きなので、サラダやパンにつけるなど熱を通さない料理に向いています。
一方で酸化しにくい油は、熱に強いので揚げ物や炒め物などに使用できます。
酸化した油は体に悪い?
加熱や光によって油が酸化すると、脂質過酸化が進行し、過酸化脂質(MDA、4-HNE)という有害物質が生成されます。
過酸化脂質を含む油を長期間摂取すると、下痢や嘔吐、頭痛などの原因となることがあります。
また、体内に蓄積し、酸化ストレスが増すことによって炎症性サイトカインの産生、DNA損傷など生体への影響から炎症、癌の進行リスクの増加も懸念されています。
さらに酸化した油はLDL(悪玉)コレステロールの酸化を促し、動脈硬化を進行させる一因となることが分かっています。
料理別、油の選び方
酸化しやすい植物油
亜麻仁油
えごま油
大豆油
ごま油
とうもろこし油
ひまわり油
オメガ3脂肪酸が豊富な亜麻仁油、えごま油などは、酸化しやすいのでドレッシングやマリネなどに向いています。
また、大豆油やごま油、とうもろこし油、ひまわり油などの一般的なサラダ油も、オメガ6脂肪酸を豊富に含んでいるため、加熱による酸化がすすみやすいとされています。
総じて、多価不飽和脂肪酸(オメガ3、オメガ6)を含む植物油は高温での使用に向いていません。
酸化しにくい植物油
米油
オリーブオイル
キャノーラ油
ココナッツオイル
一価不飽和脂肪酸が多く含まれる、米油、オリーブオイル、キャノーラ油などは、酸化しにくく高温調理に向いています。
またココナッツオイルは、飽和脂肪酸を多く含んでおり酸化しにくく焼き菓子や炒め物に利用できます。
料理別に適した油をまとめました。
料理 | 推奨される油 | 主な脂肪酸 | 酸化リスク | 保存方法 |
---|---|---|---|---|
揚げ物 | 米油、キャノーラ油、オリーブオイル(精製) | オメガ9、オメガ6 | 低(米油は特に安定) | 直射日光を避け、密閉容器で保存 |
炒め物 | 米油、オリーブオイル(精製)、菜種油 | オメガ9、オメガ6 | 低~中(オリーブオイルは比較的安定、菜種油は中) | 冷暗所、密閉保存 |
焼き物 | オリーブオイル(精製)、菜種油、米油 | オメガ9、オメガ6 | 中(菜種油はやや酸化しやすい) | 直射日光を避け、密閉容器で保存 |
中華 | 米油、ごま油 | オメガ9、オメガ6 | 中(ごま油は香り成分の酸化に注意) | 冷暗所、密閉保存 |
ドレッシング・和え物 | オリーブオイル(エキストラバージン)、えごま油、亜麻仁油 | オメガ9、オメガ3 | 高(えごま油・亜麻仁油は特に酸化しやすい) | 冷蔵保存し、開封後は早めに使用 |
以上のように、高温調理では熱に強く酸化しにくい米油やキャノーラ油、オリーブオイルなどが向いています。
一般的な菜種油も加熱料理に利用されますが、キャノーラ油より多価不飽和脂肪酸(リノール酸・α-リノレン酸など)を多く含み、熱によって酸化しやすいため、短時間の加熱調理向きと言えます。
揚げ物のような長時間の高温調理の場合は、オメガ9(オレイン酸)を多く含み酸化しにくいオリーブオイルや米油を選ぶと良いでしょう。
「酸化しにくい」遮光瓶の油を選ぶ
ビスフェノールA(BPA)のリスク
市販の食用油の容器にはプラスチックボトル、ガラス瓶、紙パック、缶などがありますが、健康リスクを考慮すると「ガラス瓶」が安全です。
その理由として、食用油をはじめ、ペットボトル、食品の容器、包装材などに利用されているビスフェノールA(BPA)という物質が、長期的な曝露によって生殖系、免疫系、神経内分泌系などの臓器に損傷を与える可能性が指摘されているからです。
さらに、BPAは前立腺がん、乳がん、肺がんなどの腫瘍の発達との関係性や、新生児への悪影響を示唆されており、特に酸性のものや油脂に溶出しやすいとされ、プラスチックボトルの食用油における健康リスクが懸念されています。
BPAにおいては、健康リスクを踏まえ、米国環境保護庁は基準用量を体重1kgあたり0.05mg/日に設定し、欧州食品安全機関も、2015年、耐容一日摂取量を体重1kgあたり0.05mg/日から 体重1kgあたり0.004mgに引き下げました。
カナダでは2008年に有毒化学物質に分類され、哺乳瓶での使用が禁止、フランスではすべての包装、容器、調理器具におけるBPAの製造、輸入、輸出、販売が禁止されています。EUでも2024年より段階的に食品容器での使用が禁止されています。
国内のBPAにおける規制は、BPAの健康影響に関するリスクを踏まえ食品衛生法によって以下に設定されています。
食品と接触するポリカーボネート製品からのBPAの溶出量制限:2.5μg/mL以下(2.5 mg/L)
エポキシ樹脂からのBPAの溶出については、法律での規格基準は設けられていませんが、日本製缶協会の「食品缶詰用金属缶に関するビスフェノールA低減缶ガイドライン」によると、飲料缶で0.005ppm(0.005mg/L)以下、食品缶で0.01ppm(0.01mg/L)以下を目指すとされています。
このようにBPAのリスクについては、健康リスクへの懸念から基準容量が定められていますが、BPAの毒性については研究過程であり、食用油の容器はガラス瓶を選ぶのが無難でしょう。
Bisphenol A and human health: a review of the literature
The adverse health effects of bisphenol A and related toxicity mechanisms
ビスフェノールA問題についてのQ&A(日本生活協同組合連合会)
光による酸化のリスク
食用油は、光、特に紫外線に曝されると酸化が促進し、品質劣化や風味の低下を引き起こします。
あいち産業科学技術総合センターの報告では、蛍光灯程度の光でも油脂(なたね油・米油・大豆油)の酸化を促進し、劣化が進むことが示されています。(※14)
- 安全なサラダ油を選ぶ際に気をつけたいこと
- 油の搾り方は「圧搾法」できれば「低温圧搾法」
- 「化学溶剤を使わない」製法の油を選ぶ
- 「化学薬品を使わない」精製法の油を選ぶ
- 「遺伝子組み換えでない」原材料の油を選ぶ
- 業務用の食用油は避ける
- 加熱用は米油、サラダ用は亜麻仁油・えごま油を使う
- 容器は遮光性の瓶のものを選ぶ
オススメの安全なサラダ油
上記の条件を踏まえ、健康リスクの少ない安全なサラダ油を選定したいと思います。
オーサワのなたねサラダ油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
---|---|---|---|
菜種 | オーストラリア産 | 圧搾一番搾り製法 | 紙パック |
鹿北製油 国産 なたね油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
---|---|---|---|
菜種 | 国産 | 圧搾一番搾り製法 | 瓶 |
平田産業 国産なたね油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
---|---|---|---|
菜種 | 国産 | 圧搾一番搾り製法 | 紙パック |
ビオプラネット 有機なたね油

原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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有機食用なたね | オランダ | 低温圧搾 | 瓶 |
坂本製油 純なたね油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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菜種 | オーストラリア | 古式圧搾製法 | 瓶 |
OMEGAファーマーズ 国産菜種油

原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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菜種 | 国産 | 低温圧搾 | 瓶 |
ムソー 純正なたねサラダ油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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菜種 | オーストラリア | 圧搾一番搾り | 紙パック |
プレマラボ 和の玄米オイル
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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米ぬか | 国産 | 低温圧搾製法 | 瓶 |
築野食品工業 国産こめ油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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米ぬか | 国産 | 圧搾製法 | 紙パック |
メリリマ 米ぬか油
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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米ぬか | 国産 | 低温抽出 | 瓶 |
三和油脂 コメーユ
原材料 | 原産国 | 製造法 | 容器 |
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米ぬか | 国産 | 圧搾製法 | 瓶 |