安心で安全な無農薬家庭菜園にトライしたい人たちにとって、まずハードルが高いのが土づくり。
今回は、家庭菜園のための土づくりについて、現役農家の筆者が解説します。
また、無農薬と有機栽培の違いや、有機栽培のための肥料についても併せて見ていきましょう。
無農薬と有機栽培って何が違うの?
有機栽培では、どんな肥料を使えば良いの?
土づくりって何からやったら良いの?
この記事でわかること
無農薬と有機栽培の違い
無農薬は、文字通り「農薬を使用していない」という意味です。
ただし、気をつけなければいけない点があります。この「無農薬」という言葉は、野菜を販売する際に表示することができません。
有機栽培は、「農薬を利用せず、地球に優しい肥料や堆肥を使う」栽培のことです。
比較すると以下のようになります。
無農薬
①栽培期間中は農薬を使用しない
②化学肥料は使う場合もある
③無農薬野菜と表示して販売することは禁止されている
販売 | 「特別栽培品」「栽培期間中農薬不使用」と記載。 |
有機栽培
①化学的に合成・加工された肥料や農薬を使用せず、堆肥の土づくりを行う
②遺伝子組み換え技術を利用しないことを基本とする
③環境への負荷をできるだけ低減する栽培
販売 | 国から一定の条件をクリアすると「有機JAS」という記載ができます。 |
堆肥と肥料の種類
堆肥
植物性堆肥は身の回りのものを使って作ることが可能ですが、動物性堆肥を自分自身で作るのは難しいので市販を購入しましょう。
植物性堆肥
植物性堆肥は自然にあるものだけを使う堆肥です。肥料効果よりも、「土を改善する」「微生物を増やす」ことを目的とする堆肥です。
※米ぬかについては肥料効果が高いです。
植物性堆肥 | 特徴 | 材料 |
落ち葉堆肥 | 堆肥の絶対的存在と言われており、畑に微生物が住みやすい環境を整える。 | 落ち葉(広葉樹)、籾殻、米ぬか、土 |
ワラ堆肥 | 「けい酸」を多く含み、畑が病気や虫に打ち勝つ土壌になります。 | 稲わら、米ぬか、水分 |
バーク堆肥 | 土が柔らかく、ふかふかになり、畑の土壌の通気性や保水性を高くします。 | 樹の皮、米ぬか |
籾殻堆肥 | 土壌改良するのに抜群。水はけがよくなり土壌が団粒性へとつながります。 | 籾殻、米ぬか、水分 |
筆者は、公園などで落ち葉をゴミ袋に集めて、落ち葉堆肥を作っています。
落ち葉は重量がなく、女性でも集めることができるので手軽な材料として活用しています。
動物性堆肥
植物性堆肥に比べ肥料効果が高いのが動物性堆肥。
土をふかふかにしてくれます。(土に入ると長靴が抜けなくなるくらいふかふかになります!)
また、肥料持ちが良く、長く効果がある分、肥料代が安くコストパフォーマンスは◎。
筆者は夏野菜(ナス)を作る際に、定植前に牛糞堆肥を入れて保水性を高くしています。
動物性堆肥 | 特徴 |
鶏糞堆肥 | 肥料効果が化学肥料並みに強力で使いやすく、即効性があります。化学肥料に似たような効果を期待したい人には、オススメ。 |
豚糞堆肥 | 肥料効果は、鶏糞と牛糞の間の真ん中くらいで、効き目は長続きします。 |
牛糞堆肥 | 土壌改良材・元肥に使い、土を柔らかくします。そして、土壌中の水を保つ効果があるので、夏野菜の元肥にオススメです。 |
馬糞堆肥 | バラの育成に適しています。注意点として、馬糞は塩分量が多いので、発酵から完成まで時間がかかります。筆者は、先輩農家さんから「ベタベタのものは発酵が足らなくて良くない」とアドバイスをもらい、手で触ってサラサラ質感の堆肥を選んでいます。 |
肥料
毎年同じ畑を使っていると畑の土壌成分が減衰してくるので肥料を使って補充します。
特に家庭菜園の方は畑の面積に限りがある場合が多いので積極的に使いましょう。
肥料の要素
3大要素:窒素・リン酸・カリウム
その他の要素:カルシウム・マグネシウム・硫黄
微量要素:マンガン・ホウ素・鉄・亜鉛
※有機肥料は微量要素が多い。
有機肥料
自然界に存在する動物性・植物性の肥料成分を原料にした、植物・地球に優しい肥料。肥料効果は遅効性。
ボカシ肥:有機肥料の王道、「ボカシ肥」は、家庭菜園にオススメ。堆肥よりも短時間で手軽に肥料が完成します。さらに肥料3要素がバランスよく含まれ、微量要素などのミネラルも多く優秀な有機肥料です。材料は、米ぬか、おから、もみ殻醺炭、菜種の油粕、山土、水50%
有機肥料 | 特徴 |
鶏糞 | 肥料3要素を含み、特にリン酸が豊富。すぐに肥料効果が出る。 |
菜種の油粕 | 有機肥料の中でも窒素成分が豊富。土壌改良のための微生物が育つ。 |
有機石灰(カキ殻、貝殻) | アルカリを多く含み、酸性土壌の改善が期待できる。 |
草木灰 | 主成分はカリウム。果物の食味をよくする。 |
魚粉 | 窒素とリン酸を多く含み、野菜の食味をよくする。すぐに肥料効果が出る。 |
化学肥料
肥料成分(窒素・リン酸・カリウム・その他)を化学的に合成・加工した肥料。即効性。
野菜作りのための良い土
ふかふかと柔らかく、良い虫や微生物が多く生息できる土にすることが有機菜園成功の第一歩。
ここでは、良い土の条件と、必要な道具について紹介します。
良い土の条件
生きた土にする
森林の土壌のような自然の循環を見本にして、微生物が豊富な土にします。
有機栽培では、生活の身近にあるものを利用して堆肥を作り、畑にすき込むことで、ミミズや微生物が働く「生きた土」を作っていきます。
筆者も自分の畑でふかふかな土を見てみると、ミミズがいます。
(ミミズがトラクター代わりに土を耕運してくれると言われるほどです)
多様性のある土にする
雑草や野菜、ハーブ、などをバランスよく植えて、さまざまな種類の植物を育てると多様性が生まれ良い土になります。
また、農薬や化学肥料を大量に使うと害虫を駆除すると同時に、土にとって大切な微生物や害虫の天敵である昆虫もいなくなってしまいます。
水はけと水もちがよく、通気性があること
さわった時にふかふかして柔らかいのが良い土の特徴です。
微生物が活動しやすい環境になります。
土のPH値を中性から弱酸性くらいにする
多くの野菜は酸性の土壌を嫌います。
酸性度が強すぎると病気になりやすく、害虫に影響を受けやすくなります。
堆肥の特性は中性なので、積極的に堆肥を入れて調整してください。
土づくりに必要な道具
スコップ
鍬(くわ)
pH測定器(ホームセンターで購入できます。)
ジョウロ
バケツ
熊手
一輪車(あれば便利です。)
ハサミ
段ボール(落ち葉堆肥を作れる箱がわり)
麻紐(目安にしたり、括ったり便利です。)
有機栽培のための土づくりの手順
有機栽培の基本は「土の動きを良くする」です。
土づくりの手順
①天地返しで硬い土を入れ替える
栽培する予定の場所の土質が極端に粘土質で硬い場合、「表層土」と「深層土と呼ばれる深い層の土」との入れ替え作業(天地返し)を行います。
②有機堆肥を投入
天地返しで入れ替わった土に、有機堆肥をたっぷりと入れてあげます。
堆肥の場合は、入れすぎて困ることはありません。目安は、1㎡当たり5kgです。
③土の酸性度を中和する
ほとんどの野菜は酸性土壌を嫌います。
しかし、日本の気候は雨が多いので酸性に傾きやすい傾向にあります。
そこで栽培する前に土のpHを中和しておく必要があります。
有機材料として草木灰や有機石灰を使用して中和してください。
④元肥を入れる
栽培前に畑に入れる肥料を元肥と言います。
先述した、「有機肥料の代表・ボカシ肥料」が元肥に最適です。
ボカシ肥はじわじわと長時間にわたって肥料が効いてくるからです。
草木灰の作り方
①乾いた木の枝や雑草などをブロックなどの上で燃やす
②完全に燃え尽きてしまう前の炭化状態で回収する
③大きめの瓶に入れて蓋をして置いておき、後日ふるって完成
まとめ
今回は、無農薬・有機栽培の違いや家庭菜園のための土づくりについて紹介しました。
ぜひ楽しい有機栽培家庭菜園ライフを送ってください!