作物づくりで最も重要なのは土づくりです。
土づくりは、我々人間にとっての呼吸や腸内環境、居住空間を司っており、しっかり整えないと作物は正常に育ちません。
しかし逆に、ここさえクリアーできれば健全な作物収穫まで大分近づいたことになります。
今回は土づくりのポイント3つ「物理性」、「pH値」、「肥料」について紹介させて頂きます。
この記事でわかること
野菜作りに適した土づくり
土の物理性
植物にとっての呼吸
我々人間が生命活動を維持していくうえで最も重要な代謝は、「呼吸」ですが、それは植物にとっても同様です。
呼吸で酸素を取り入れる事ができなければ、体の中に蓄えた糖などの燃料を燃焼して生命活動に必要なエネルギーを作る事ができません。
植物は、根で呼吸しています。
根の周りに十分な空間があり、空気が存在することで酸素を得ることが出来ます。
したがって土の中に空気の層が確保されている事が重要です。
そのような土の中の空気の部位の事を専門的には「気相」と呼びます。
植物にとっての水
次に大事な要素は「水」です。これも人間と同じですね。
植物は、水を介して養分を吸収しますし、体内の栄養の移動や光合成で糖を合成するのにも水は不可欠です。
土の中で、「水」をつかさどるのは細かい隙間です。大きい隙間にある水は重力で流れて大き目の空間を作り先程の気相となります。
程々の細かい隙間に残った水は、植物の生育に使われます。
この植物が利用できる水の層の事を専門的には「液相」と呼びます。
さらに細かい隙間に入った水は、強力な圧力(毛細管現象による圧力)により吸い出す事が出来ず、植物は利用する事ができません。
乾くとレンガの様に固くなる土に水を加えると泥の様になり、一見水が豊かに思えるのですが、この水を植物が吸収できないのはこの為です。
そして隙間の無い土の層は「固相」とされ、土の中の「土、水、空気」の割合の事を「土壌三相」と呼ばれています。
良い土の条件
この3つのバランスは、40:30:30が望ましいとされています。
つまり40%が土で、30%が細かい隙間、30%が大きな隙間という事になります。
60%が隙間ですから、土の重さ(比重)は軽くなります。
このような状態の土は、「水はけが良く、水持ちも良い」、相反する性質を同時に持つものです。
これが作物生産に適する土の状態なのですが、実際の畑の土の状態は様々です。
そこで「堆肥による土壌改良」が重要となってくるのです。
堆肥による土壌改良
土の中の空気、水、土の層の割合を適正にすることが、作物の健全な生育に最重要であることを紹介しました。
土を適正な物理性にする為に有効な方法は、「堆肥」の施用です。
堆肥は、即効的に土の中に適正な隙間をつくるのは勿論、土の中の微生物のエサとなります。
微生物の分泌した粘膜が土の微粒子を絡めとり、長期的にふんわりした隙間の多い土に変えてくれるのです。
堆肥には、家畜糞堆肥、バーク堆肥、生ごみコンポストなどがあります。
前者ほど物理性改善効果が高く、後者ほど肥料効果が高くなります。
使い方は、バーク堆肥、牛糞堆肥は2kg/㎡、豚糞堆肥、鶏糞堆肥は200g/㎡を土の深さ10㎝の層に鋤きこんで下さい。
初回のみ倍量を施用し、以後1年に一回施用しましょう。
堆肥の種類
①バーク堆肥
②牛糞堆肥
③豚糞堆肥
④鶏糞堆肥
⑤生ごみコンポスト
土のpH値
理想のpHは高すぎず低すぎず
土の物理性が整った次にすることは、「pH」の調整です。
多くの作物が生育し易いpHは、6.5~6.8とされています。
作物は根から根酸という弱い酸を分泌し、土に吸着された養分を溶かしながら吸収していきます。
この生理作用が最もスムーズに行われるpHが6.5~6.8なのです。
もしpHが高すぎる(アルカリ性)と、養分が土と強く結びつき過ぎて溶け出し難くなります。逆に低すぎる(酸性)と、溶け出し過ぎて養分過剰症になったり、雨で養分が流れてしまったりします。
苦土石灰とは?
ここでは最もポピュラーなpH調整の方法として、「苦土石灰」によるpH調整を紹介いたします。
対象となる土が、適正pHであるならば、苦土石灰を年に1回100g/㎡を施用し深さ10㎝の層に鋤きこんで下さい。
これは、土は酸素と結びつく(酸化)ことや雨の影響で徐々に酸性側に変化していく為です。pHが低すぎる場合は、倍量を施用して下さい。
pHが高い場合は施用しません。ここで、注意すべき事は施用し過ぎないことです。
肥料
必須多量元素と須微量元素
作物の生長に必須となる栄養素は、必須多量元素(炭素、水素、酸素、窒素、リン酸、カリウム、カルシウム、マグネシウム、硫黄)、必須微量元素(鉄、マンガン、ホウ素、亜鉛、モリブデン、銅、塩素、ニッケル)の17種類です。
炭素、水素、酸素は、大気中や水から摂取するため施用する必要がありませんが、その他の栄養素は作物を栽培することで減少していきます。(収奪と言う。)
なので作物を栽培する環境が整いましたら、肥料を施用するプランを考えましょう。
先に紹介した栄養素のうち、必須微量元素は「堆肥」を施用することでほぼ欠乏することはありません。
作物の栽培で大量に使われる必須多量元素を主に肥料で補っていくことになります。また化成肥料で育てるのか、有機質肥料で育てるのか、半分ずつでいくのか?
栽培する方のお好みで決めていきましょう。
肥料の種類
①化成肥料
②有機質肥料
化成肥料は即効性で成分が高いので少量の施用で済みます。
主要の栄養素の窒素、リン酸、加里がバランス良く含まれているものが殆どです。
有機質肥料は、土の中の微生物によって分解され作物に吸収される形態になる為、肥料効果を発現するまで時間が掛かります。
一般的には、1~2週間で肥料効果がピークになりますので、施用や定植のタイミングに調整が必要となります。
また化成肥料に比べじっくり長く効く特徴があります。
基肥と追肥
定植や播種時に施用する肥料の事を「基肥」(もとごえ)と言います。
また栽培の途中で施用する肥料の事を「追肥」と言います。
じっくり長く効く有機質肥料を基肥に、即効的に効く化成肥料を追肥に使うのも一つの方法です。
肥料の施用例
施用の方法は、堆肥同様、土の深さ10㎝程の層に鋤きこむのが基本です。
表面に施用すると、肥料効果は半分程度になります。追肥は、鋤きこめないので表面に施用します。
各施用量と施用タイミングは作物ごとに異なりますので、本やネット、農協の肥料こよみを参考にして下さい。
これらは、大抵肥料の成分のみで示され、1000㎡=10aあたりの施用量で示されています。
例えばレタスなら窒素20㎏/10aなどと示されているのですが、この場合㎡あたり20gということになります。
お使いになられる肥料の窒素が10%であるならば20g÷0.1(10%)=200gを施用するという事になります。
また有機質肥料の場合は、土中の微生物の分解を介する際、およそ肥料効果は半分になる為、計算の2倍量を施用して下さい。
堆肥の選び方
①生ごみコンポスト
②家畜糞堆肥
③バーク堆肥
生ごみコンポスト
ご家庭の生ごみコンポストづくりは、環境にやさしいごみ処理方法として近年普及してきています。
家庭の生ごみにおが屑や土を混合してつくるものが多いのですが、この際注意すべきポイントは、調理後のものを加えないこと(塩分が多い為)と、油を加えないこと(分解が困難)です。
臭いが少なくなるまで分解したものを使用します。
家畜糞堆肥
家畜糞と敷料、木質を原料とした堆肥です。牛糞堆肥が最も流通量が多く、使い易いです。
市販されているものの品質は様々ですが、臭いが少なく、色が暗褐色ものは良く腐熟している指標です。
腐熟が進んでいないものは、アンモニアガス障害の原因になるので使用を避けましょう。
また、肥料成分が高いものも肥料コントロールが難しくなるので避けます。
バーク堆肥
木の樹皮に家畜糞を混合し、1年以上堆積発酵した堆肥です。土の中に隙間を作る効果が高く、肥料成分は少なめ。長期間に渡って土づくり効果がある堆肥です。
価格は高め。
各野菜の栽培概要
トマト
上記方法で土づくりをしたのち、畝をつくり、畝1㎡あたり化成肥料(窒素:りん酸:加里=8:8:8)を120gを施用、40㎝程度の間隔で支柱を立て、支柱の下に苗を定植して下さい。
果実がピンポン玉程度になったら畝1㎡あたり化成肥料80gを株間に施用します。
第4果房に果実ができたら先端を折ります。(摘芯)以後適宜、芽かき、追肥を行なって下さい。
きゅうり
上記方法で土づくりをしたのち、畝をつくり、畝1㎡あたり化成肥料(窒素:りん酸:加里=8:8:8)を200gを施用、50㎝程度の間隔で支柱を立て、支柱の間にネットを張ります。
支柱の下に苗を定植して下さい。
定植後2週間毎に畝1㎡あたり化成肥料70gを追肥します。