原子力発電所稼働状況マップ

福島原発事故による影響と現在の放射能汚染マップ【2024年度版】

学び
公開日時:2024/01/25
更新日時:2024/01/30

2024年の1月1日の能登半島地震によって、石川県の志賀原発では外部電源のための変圧器が壊れ、一系統二回線が使えなくなり、復旧に半年かかると報道されました。

2011年の福一の原発大事故後の新しい規制基準では、地震と津波によって全電源を失った教訓から、発電所内に非常用発電機など複数の電源を備えることが義務付けられています。

しかしながら、発電所内の変圧器の耐震性は一般産業用と同じ扱いであり、地震対策としての安全面には疑問符がつきます。

当記事は、国内の原発事故の解説、そして現在の放射能汚染状況等を検証し、国内での原発の稼働状況を見ていきたいと思います。

国内での放射性物質漏えい事故

原発事故
原発事故というと、1999年の東海村臨界事故や2011年に起きた福島第一原子力発電所の惨事を思い浮かべる人が多いと思いますが、放射性物質が管理区域外へ漏れ出した原発事故、あるいは想定外の臨界事故は国内でも実は少なくない数起きてます。

例えば、1978年に起きた福島第一原発での臨界事故は、制御棒の水圧を調整する弁の操作ミスが原因とされ、7時間半、臨界が続いたと言われています。(この事故の3ヶ月後、7ヶ月後にも制御棒の脱落が起きており、さらに他の原発でも同様の事故が起きています。また、この事故が公表されたのは、事故発生から29年後の2007年3月になってからだと言います。)

1991年2月には美浜原発(福井県)で弁操作の誤りにより伝熱細管が破損し、55tもの一次冷却水が漏洩し、放射性希ガス約222億ベクレル(約0.6キュリー)、放射性ヨウ素約3.7億ベクレル(約0.01キュリー)が環境へ放出されました

1999年6月には、志賀原発(石川県)で、沸騰水型原子炉の弁操作ミスにより、15分間の臨界が続きました

人為的操作ミスの他、2007年の新潟県中越沖地震によって柏崎刈羽原発では外部電源用の変圧器から火災が発生し、微量の放射性物質の漏洩が検出されました。

現在の放射能汚染状況(ホットスポット)

福島の汚染

国内最大の原発事故である福島第一原発事故によって放出された放射性物質は、52京ベクレルと推定されています。

風で内陸に飛んだ放射性物質のおよそ7割は、福島周辺の森林に落下したと言われており、汚染された森林の大部分は除染されていません

事故から13年が経とうとしていますが、依然として福島県内の森林や山菜・キノコなどの放射能汚染は続いています。

特に、放射性物質の半減期がおよそ30年と言われるセシウム137は今もなお、放射線を出し続けています。

関東地方の放射能汚染状況(モニタリングポスト)

放射性セシウム推計

出典:NPO法人みんなのデータ「2020年7月の東日本17都県放射能測定マップ 」

放射性物質は、気流によって東北、関東地方の広範囲に落下しており、福島以外にも首都圏でも湖沼や河川、公園などで高い放射線量が散見されています。

首都圏の放射線量は2011年から2012年にかけて高い数値を記録しており、少しずつ線量が下がってきたとはいえ、2014年の秋以降は線量が下がることがなくなりました

その理由としては半減期がおよそ2年とされるセシウム134が一定量失われ、半減期の長いセシウム137が残っているためと言われています。

以下は、2022年11月から2023年11月までのセシウム137降下量上位10都県になります。福島を除いた東北・関東圏のうち、宮城県、茨城県、東京都が、他県と比べると高い数値となっているのが分かります。

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環境放射能水準調査結果(放射性セシウム137 MBq/km2)
月間降下 上位10都県 – 2022年11月〜2023年11月
平均 合計 11月 12月 1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
福島県 6.93 94.14 11 4.3 14 29 10 8.1 5.8 1.8 1.2 4.2 0.79 0.85 3.1
茨城県 0.58 7.18 0.26 0.29 0.46 0.97 0.99 1 0.56 0.41 0.27 0.25 1.3 0.24 0.18
宮城県 0.53 6.45 0.15 0.13 0.16 0.44 0.75 1.1 0.38 0.17 0.081 0.17 0.13 2.5 0.29
東京都 0.38 4.71 0.13 0.083 0.81 0.52 0.63 0.41 0.49 0.16 0.12 0.13 0.97 0.11 0.15
栃木県 0.27 3.39 0.098 0.56 0.42 0.35 0.43 0.56 0.22 0.15 0.18 0.1 0.16 0.092 0.066
群馬県 0.24 2.94 0.071 0.14 0.61 0.35 0.56 0.36 0.16 0.12 0.18 0.1 0.11 0.06 0.12
埼玉県 0.24 2.93 0.084 0.1 0.68 0.28 0.77 0.17 0.17 0.067 0.14 0.13 0.086 0.097 0.16
千葉県 0.19 2.36 0.14 0.13 0.29 0.26 0.28 0.21 0.34 0.092 0.18 0.068 0.11 0.1 0.16
山形県 0.13 1.56 0.054 0.08 0.11 0.095 0.23 0.29 0.17 0.14 0.076 0.13 0.085 0.049 0.052
神奈川県 0.11 1.45 0.086 0.061 0.14 0.49 0.14 0.11 0.095 0.063 0.045 0.043 0.047 0.038 0.091
静岡県 0.04 0.58 0.043 0.04 0.044 0.047 0.047 0.07 0.042 0.042 0.038 0.043 0.041 0.042 0.043
福岡県 0.04 0.54 0.044 0.04 0.052 0.039 0.045 0.044 0.04 0.038 0.042 0.039 0.039 0.039 0.037
愛知県 0.04 0.47 0.038 0.035 0.035 0.037 0.035 0.035 0.037 0.036 0.035 0.037 0.038 0.036 0.035
大阪府 0.03 0.44 0.037 0.033 0.032 0.035 0.032 0.034 0.036 0.035 0.035 0.032 0.034 0.033 0.033

参考:原子力黄瀬委員会「東京電力福島第一原子力発電所事故に関する環境モニタリング結果の評価・解析」

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首都圏のホットスポット(モニタリングポスト)

福島原発事故後、5年後の放射線量計測でも、首都圏の一部地域で非常に高濃度の放射性セシウムが観測されており、場所によっては放射線管理区域の基準の50倍以上のホットスポットがありました。(放射線管理区域は615Bq/kg、40000Bq/平米以上)

以下は、東京近郊の主なホットスポットです。

首都圏の放射能による土壌汚染測定結果
市町村 採取場所 分類 キログラム当たりのセシウム(Bq/kg) 乾燥させた状態での
キログラム当たりのセシウム(Bq/kg)
平米当たりのセシウム(Bq/m2)
松戸市 松戸市住宅街(小金原6丁目) 土壌 24840 34548 1270000
柏市 柏の葉公園(池) 低質 3286 5477
葛飾区 水元公園(公園の土) 低質 3252 6402 197000
牛久市 稲荷川・三日月橋 低質 870 2613
取手市 住宅街(永山公民館近く) 低質 800 2402
台東区 上野恩賜公園(美医術館近く) 土壌 450 702 19000
印西市 手賀沼排水機場脇(利根川との合流点) 低質 375 894
佐倉市・印西市 印旛沼(船戸大橋) 低質 313 940
柏市 手賀沼(西岸) 低質 260 697
江戸川区 葛西臨海公園(大観覧車近く) 232 330 16300
世田谷区 駒沢オリンピック公園(バスケットゴール裏) 土壌 189 266 6350
足立区 舎人公園(トイレ近く) 土壌 161 201 7090
行方市・かすみがうら市 霞ヶ浦(霞ヶ浦大橋) 低質 151 453
江戸川区 荒川(葛西橋) 低質 149 334
江戸川区 新川(橋の上) 低質 148 310
練馬区 石神井公園(野球場) 土壌 83 109 4820

上記のモニタリングポストでの計測では、首都圏の東部で高濃度の汚染が見つかっています。特に利根川水系である牛久沼や手賀沼などの湖沼の低質が汚染されていることから、利根川の汚染が濃縮され下流に堆積していることが窺えます。

河川(底質)の放射性セシウム濃度の推移 (利根川水系)(令和3年度)

日本国内での原子力発電所マップ

現在の原発稼働・停止状況

全国の原子力発電所 マップ

参考:原子力規制委員会「原子力発電所の現在の運転状況」

全国には、稼働中・停止中・廃炉準備中・廃炉を含めると、57基もの原発があり、さらに青森に2基、島根に1基が現在建設中です。(うち青森の東通原発1号機は工事凍結中)。

また、もんじゅは廃炉が決定、茨城県の「常陽」は現在再稼働申請中で、それらの高速実験炉を合わせると全国には59基の原発があり、他にも新規建設が計画されている原発は8基あります。

59基の原発のうち、廃炉及び、廃炉へ向けた準備をしている原発は25基です。「常陽」を除けば、2024年2月時点で稼働できる原子力発電炉は33基あり、そのうちの12基が原子力規制委員会の審査を通過し再稼働可能とされ、10基が稼働しています

原発は炉心の燃料から発生する熱を冷やす大量の冷却水が不可欠なので、日本では沿岸部に建設されています。また、既に再稼働した10基の原発は西日本に集中しています。

国内の原子力発電所からの距離

チェルノブイリ事故の環境への影響

原発事故
1986年のチェルノブイリ原発爆発事故とその後、10日間続いた原子炉の火災により大量の放射性物質が放出され、ベラルーシ、ロシア連邦、ウクライナをはじめ、周辺諸国も事故の影響を受けました。

汚染された範囲は、半径50km内のほぼ全域、北東方向にベラルーシとロシア国境付近150〜250kmの地域まで汚染が広がり、20万人以上が移住を余儀なくされたそうです。

ロシアからヨーロッパの地域で2000Bq/m2を超える放射性物質の降下があったとされています。現在もおよそ500万人が汚染された地域で生活を続けています。

原発事故を想定した防護措置区域とは?

緊急時防護措置を準備する区域(UPZ)
IAEA(国際原子力機関)の国際基準に則って、原子力発電所から半径5kmをPAZ(防護措置区域)、半径30kmをUPZ(緊急時防護措置準備区域)として、重大事故の際に放射線被ばくによる影響のリスクを減らすため、屋内退避や避難、安定ヨウ素剤の服用などの措置をすることと定められています。

UPZ(緊急時防護措置準備区域)のエリアを地図上で表すとこのようになります。

原発から半径30kmのエリア

さらに各原発立地から半径50kmの円を描くと下記のようになりました。

国内の原子力発電所から半径50kmのエリア

留意しなければならないのは、UPZ(緊急時防護措置準備区域)の区分は、福島原発事故前にIAEAが制定した「想定」であり、福島原発事故の放射性被曝、あるいは事故の影響を十二分に踏まえたものにはなっていません。

福島では、UPZ(30kmの範囲)外に位置していながら、今もなお自宅に帰れない人々が存在し、原発からより距離のある地域でも放射性プルームに起因する屋内退避勧告がされています。

原子力災害対策指針による国の想定が実際の放射性被害よりも小さく見積もられており、事故からの教訓を踏まえていない「想定」が、いまだに原則となっていることが問題かもしれません。

「全電源喪失」は想定外なのか

福島原発事故の直接的な原因は津波による全電源の喪失で、電力が確保できずに原子炉の冷却機能を失った結果、水素爆発が起きました。

津波によって全電源を失う可能性があること、そしてその場合の冷却水の注水手段の確保について配慮すべきだと指摘する民間の科学者や研究者は事故以前から多く、2006年には、スウェーデンのフォルスマルク原発で起きたバックアップ電源の機能不全事例(※注1)を引き合いに、そのリスクを留意すべきだとの意見書(※注2)が国会でも再三提出されてきました。

しかしながら、当時の内閣総理大臣 安倍晋三氏は、「我が国において、非常用ディーゼル発電機のトラブルにより原子炉が停止した事例はなく、また、必要な電源が確保できずに冷却機能が失われた事例はない。」と回答し、さらに「我が国の原子炉施設は、フォルスマルク発電所一号炉とは異なる設計となっていることなどから、同発電所一号炉の事案と同様の事態が発生するとは考えられない。」と答弁しています。

原子力発電所

その後の質疑応答の中で、同首相は「(指摘された)そのような事態が生じないように安全の確保に万全を期している」と繰り返し答弁していましたが、「前例」のない災害が起きて、フォルスマルク原発の事例と同じくバックアップ電源の喪失が起因してメルトダウンが起こってしまいました。

想定外の出来事に対して後から「こうしたらよかった」と論じることは、あるいは生産性のあることtは言えないかもしれませんが、「前例」がないことを根拠に、これまで問題なかったのだからこれからも問題は起きないだろう、というのはあまりに短慮軽率と言わざるを得ません。

少なくない専門家が繰り返し、日本の原発の危険性を訴えていたにも関わらず、「日本の原発において、格納容器が崩壊して放射能の大量漏洩はあり得ない」と国と電力会社は強弁してきました。

地震や津波は自然災害なのだから、誰にも想定はできないし、コントロールすることも困難です。それでも専門家の指摘に少しばかり耳を傾ける姿勢があれば、あるいは被害を最小化することができたかもしれません。

注1: 「スウェーデンのフォルクスマルク原発1号(沸騰水型原発BWRで出力一〇〇・八万kw、運転開始一九八一年七月七日)の事故例を見ると、バックアップ電源が四系列あるなかで二系列で事故があったのではないか。 しかも、このバックアップ電源は一系列にディーゼル発電機とバッテリーが一組にして設けられているが、事故のあった二系列では、ディーゼル発電機とバッテリーの両方とも機能しなくなったのではないか。日本の原発の約六割はバックアップ電源が二系列ではないのか。仮に、フォルクスマルク原発1号事故と同じように、二系列で事故が発生すると、機器冷却系の電源が全く取れなくなるのではないか。」
注2: 国会での質問は京都大学工学部原子核工学科出身の吉井英勝衆院議員によるもので、吉井議員は原発の危険性について当時から警鐘を鳴らしており、津波による冷却水の注水が困難になること、また老朽化している福島第一原発の危険性について国会でも訴えていました。

おまけ:原発から半径100kmの範囲を円で囲うと、国土の大半を覆ってしまいます。

原発から半径100kmのエリア

この記事を書いた人:Marei Suyama
株式会社good umbrella代表。東京と岡山の山間部を行き来して生活しています。 持続可能な社会を作るため、また人々の健康のための役に立つ情報・tipsをご紹介します。有機食品・フェアトレード製品・健康生活用品、オーガニックコラムなど。
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