2023年、東京都多摩地域の水道水源に有機フッ素化合物PFASが検出されたことが報道され、水道水の品質に不安を感じる方も増えたのではないでしょうか。
この記事では、PFASとは何か、摂取するとどんな健康リスクがあるのか、また国内外におけるPFASの規制・汚染状況を見ていきます。
最後にPFASを完全除去できる浄水器をご紹介しますので、水道水を飲用している方はぜひチェックしていただけたらと思います。
この記事でわかること
有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)とは?
有機フッ素化合物PFAS(ピーファス)とは、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物の総称で、テフロン加工された鍋やフライパンなど、容器のコーティング、ハンバーガー店の包み紙、ピザの箱に掃除用品、衣料品の防水加工まで、生活のあらゆる場面で使われている化学物質です。
さらに泡消火剤としても使われるため、航空施設や軍事施設でも使用されています。
経済協力開発機構(OECD)の報告では4730種類以上物質が特定され、その中の、PFOS(ピーフォス)とPFOA (ピーフォア)が、環境残留性(分解されないため壊れにくい)、人や生物への長期毒性(体内で代謝されず生体にたまりやすい性質)から「forever chemicals(永久化学物質)」と呼ばれ、国際的に製造が禁止されています。
国際がん研究機関(IARC)は、PFOAについて発がん性の恐れがある物質としてGroup 2B(ヒトに対する発がん性が疑われる)に指定しました。
PFASにおける健康リスク
欧州環境庁 (EEA) は特定のレベルのPFASは以下の健康影響の可能性を指摘しています。
甲状腺疾患
コレステロール値の上昇(肥満のリスク)
ワクチンに対する反応の低下(破傷風・ジフテリアのワクチン接種効果)
乳腺の発達の遅れや、妊娠高血圧症など
低出生児体重(胎児の発達への影響)
肝臓障害
腎臓がん・精巣がん
ヒトに対するPFASの健康リスク(出典:US National Toxicology Program, (2016); C8 Health Project Reports, (2012); WHO IARC, (2017); Barry et al., (2013); Fenton et al., (2009); and White et al., (2011). )
近年、欧州やアメリカではPFASに対する規制が厳格化されており、2000年には米国の大手PFASメーカー「3M社」が、先述のPFOSとPFOAの製造を自主規制することを決め、2025年までに全てのPFAS製造を中止することを発表しました。
また、ストックホルム条約(POPs条約)によっても、PFOSとPFOA、さらにペルフルオロヘキサンスルホン酸(PFHxS)が製造、輸入が規制され、同条約に基づき日本においても製造・輸入が原則禁止となりました。
各国のPFASにおける基準値
地域 | PFAS | 飲料水 | 環境中(河川・地下水など) |
米国 | PFOS | 0.02ng/L | 40ng/L |
PFOA | 0.004ng/L | 60ng/L | |
ドイツ | PFOS | 300ng/L | 100ng/L |
PFOA | 300ng/L | 100ng/L | |
EU | PFAS(合算値) | 100ng/L | |
日本 | PFOS/PFOA合算値 | 50ng/L(暫定指針値) | 50ng/L(暫定指針値) |
日本でのPFAS検出事例
米軍・自衛隊基地からの流出
日本でも、各地の水道水から規制値を超えるPFASが検出されており、大きな問題になっています。
2022年5月、横須賀市の米軍基地内の排水処理施設で最大1Lあたり1万2900ng(規制値の258倍)ものPFASが検出されました。排水は東京湾に流しているため、基地外にも流出した可能性があると報告されています。
さらに、米軍基地内での高濃度PFASの検出は各地で頻発しており、2022年1月青森県の三沢基地で規制値の42倍のPFASが検出、同9月には神奈川県の厚木基地で規制値の3倍、いずれも消火剤を含む水が流出した際の事故でした。
米軍基地が集中する沖縄では、基地周辺にある河川、さらに水道水からもPFASが検出されており、47箇所中、33箇所で、指針地を超えていたそうです。
水源からPFASが検出された地域等
東京多摩地区
2020年1月、東京・多摩地域で水道水源の井戸から1340ng/Lという高濃度PFASが検出されました。
専門家と市民団体(※)が、2022年11月から23年3月にかけて、住民を対象にした血中PFASの測定を実施したところ、PFOSとPFOAをあわせた血中濃度の平均値は14.6ngで、国が2020年に全国3地点で行った調査の血中濃度平均値のおよそ2.4倍だったそうです。
※多摩地域の有機フッ素化合物汚染を明らかにする会、医療機関・原田浩二氏(京都大学大学院医学研究科環境衛生学分野 准教授)
東京都は2007、8年に多摩地域の234カ所の水道水調査で、PFASが4カ所で1000/Lを超え、30カ所で100/Lを超えていましたが、データは公表していませんでした。
2023年9月21日追記
東京・多摩地域で水道水源の井戸が発がん性の疑われる有機フッ素化合物(PFAS=ピーファス)で汚染されている問題で、住民の血中PFAS濃度の検査に取り組む市民団体が21日、計791人分の分析結果を報告した。都水道局が汚染で井戸の取水を停止した7市の住民の67%が、米国で「健康被害の恐れがある」とする指標を超えていた。受検者向けの健康相談外来で、PFASが発症リスクを上げる脂質異常症を「治療中」と答えた割合が、国調査の平均の約2倍だったことも判明した。
米国アカデミーは同ガイドラインの中で、主要PFASの合計血中濃度が2ng/mLを超える患者に関しては、医療機関は脂質異常症や妊娠高血圧症、乳がんなどの発症に注意を払う必要があると助言。さらに、20ng/mLを超える患者は、健康被害のリスクがより高く、医療機関は上記の症状に加え、甲状腺の病気や腎臓がん、精巣がん、潰瘍性大腸炎の発症についても注意する必要があると述べている。
多摩地域PFAS体内汚染マップ
岐阜県各務原市
2023年9月、岐阜県各務原市の半数の世帯に水道水を供給している水源地から、国の暫定指針値を上回るPFASが検出されたことを受け、市は、市内全域の定点観測井戸95カ所の地下水調査をしました。
1L当たり50ng以下とする国の暫定指針値を超過したのは、鵜沼三ツ池町、大佐野町、那加桜町の井戸計5カ所で、63~140ナノグラム(最大で指針値の11倍以上)を検出したそうです。
岡山県吉備中央町
2023年10月、岡山県吉備中央町の円城浄水場から国の暫定指針値を超過するPFASが検出されていたことが判明しました。
町は、10月に備前保健所から緊急の指摘を受け、2020年度から2022年度までの3年間の検査結果を報告しました。
それによると、「PFOS」と「PFOA」の値は、2021年度で国の暫定指針値の24倍にもあたる1Lあたり1200ng、2022年は28倍にあたる1400ngという極めて高い濃度のPFASが検出されていたとのこと。
町は2021年度の結果を公表していなかった理由について「水道法で定められた検査項目ではなく、飲み水として適切だと判断した」と釈明しています。
しかし水道法で利用者への提供が義務づけられている水質検査の項目について、2020年度から2022年度までの3年間の結果を公表していませんでした。
2023年10月、522世帯およそ1000人の住民が町内の給水所で飲料水を汲むなどの対応を強いられました。
さらに、同浄水場の水源の河平ダムやダム上流の13地点で水質調査を実施したところ、国の暫定指針値の74倍となる1Lあたり3700ngを検出しました。浄水場の3倍以上となっており、緊急で発生源の特定を進めています。
愛知県豊山町
2021年3月、愛知県豊山町の豊山配水場で高濃度のPFASが検出され、現在も配水が停止されています。国の指標値の12倍以上のPFASが検出されました。
2023年6月、豊山町・北名古屋市に住む54人の血液検査の結果、PFAS4種類の合計で、米国における健康リスクの指標であるの血中濃度が20ng/mLをおよそ半数の25人が上回ったとのことで、最も高い人では、3倍を超えていたといいます。
日本におけるPFAS指針値超過地点 上位10位
地名 | PFOS+PFOA合計値 |
大阪市(大阪府) | 5500 |
摂津(大阪府) | 1855.6 |
大分市(大分県) | 1800 |
大阪市(大阪府) | 1700 |
宜野湾市(沖縄県) | 1303 |
綾瀬(神奈川県) | 1300 |
嘉手納(沖縄県) | 1188 |
嘉手納(沖縄県) | 1100 |
大分市(大分県) | 880 |
嘉手納(沖縄県) | 815.3 |
名取(宮城県) | 790 |
立川(東京都) | 640 |
調布(東京都) | 556 |
浄水器の認証規格
JIS認証
ここまで見てきたように、全国さまざまな地域でPFASの指針値をはるかに超えた汚染が見つかっています。
東京や沖縄など、基地や空港の近くの地域に汚染が多い傾向が見られますが、まだ調査がしきれていないだけで、実際は汚染している土地も多い可能性があるため、水道水の浄水処理が大切になってきます。
さて、日本の多くの浄水器では日本産業規格(JIS規格)と、浄水器協会(JWPA)と呼ばれる規格基準を採用しており、この規格による除去対象は22種項目です。JIS規格だけで見ると、除去対象物質は17項目になります。
この22の物質、または17の物質にはPFASやその他の人体に有害な物質が含まれていないため、浄水器の検査項目になく企業による自主検査になるわけです。
NSF認証
PFASやその他の残留農薬など、健康リスクのある有害物質においては、NSFと呼ばれるアメリカの国際認証機関の認証を受け除去性能(物質除去項目:104種)が認められます。
NSF認証規格は、JIS規格と異なり年1回の定期検査を実施し、新たな有害物質によるリスクが見つかった場合では規格変更が行われアップデートされるので、(例えば、東日本大震災による原発事故以降、放射性ヨウ素に対しての国際準規格が確立されました。)認証維持が難しいとされています。
また、NFSは、飲料水における安全と処理に関して、世界保健機関(WHO)が採用しており、さらにどこの国の行政にも属さずにあくまで中立の立場をとった第三者機関のため、信頼性の高い機関と言えるでしょう。
そこで今回は、NFS認証のプロトコルに準拠している浄水器を主に、ご紹介していきたいと思います。
PFASを確実に除去できる浄水器おすすめ3選
マルチピュア Aquaextra 浄水器
米国カリフォルニア州の高性能浄水器メーカーです。
NSF認証を取得しており、さらにAquaextraシリーズは、NSF規格で除去が認められている「ベンゼン」や「アスベスト」に加え、90項目以上の不純物を除去し、「PFOA/PFOS」も95.5%という水準でカットします。
さらに、薬剤等を使わずにウィルス99.99%、バクテリアを99.9999%も除去することのできる浄水器です。
また、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは通過させるため、有害物質を除去しつつ天然水としての品質を保持します。
外形寸法 | 125.0mm×216.0mm |
重量 | 2.5㎏ |
ろ過材交換時期 | 1日46L使用で約12ヶ月 |
ろ材の種類 | 活性炭/セルロース繊維 |
ろ過水量 | 2.35L/分 |
除去項目規格 | ANSI/NSF規格53, ANSI/NSF規格42, ANSI/NSF規格401, ANSI/NSF規格P231, ANSI/NSF規格P473, ANSI/NSF規格P477 |
磨水Ⅳ浄水器J207P(据え置きタイプ)
国産の据え置き型浄水器。NSF/ANSI規格53/42/401に準拠し、有害物質98+2項目を除去します。
また、JWPAS B.210浄水器の除去性能等試験を第三者機関にて実施し、PFOA/PFOSの除去性能も実証されています。
米中の有害物質処理器の性能試験(生活飲用水水質処理衛生安全及び機能評価規範一般水質処理器/環境ホルモン・ダイオキシンを含む98項目の有害物質除去試験)をクリアしています。
外形寸法 | 200mm×285mm×155mm |
重量 | 2.4㎏ |
ろ過材交換時期 | 1日8L使用で約12ヶ月 |
ろ材の種類 | 圧縮固形活性炭 |
ろ過水量 | 2L/分 |
除去項目規格 | ANSI/NSF規格53, ANSI/NSF規格42, ANSI/NSF規格401 |
シーガルフォー X-1DE 浄水器
米国ゼネラルエコロジー社によって開発された浄水器。ANSI/NSF53認証に準拠しており、また様々な検査機関による除去物質試験データが公開されています。
有害な化学物質をはじめ、細菌・ウィルスまで、ほぼ100%近く除去します。浄水能力は、カートリッジ交換目安時期まで維持されるようです。
シーガルフォーの独自の浄化システムである「ストラクチャード・マトリックス」は、0.4ミクロン以上(~400ナノメーター)の粒子のマイクロ濾過です。
細菌や寄生虫、サビやカビの原因粒子、放射性降下物などは入口でカットし、水に溶け込んだトリハロメタンや農薬、PCB、塩素などの化学物質は、分子吸着室にてキャッチします。
さらにミネラル成分は通過させるため、水に含まれる栄養分はそのままの状態で飲用することができます。
シーガルフォーの日本代理店であるグランドデュークス東海さんの「シーガルフォー浄水システムのPFAS(PFOS・PFOA)の除去性能分析結果について」によると、4500L通水後のPFAS除去率は93%となっています。
特筆すべきは、放射性物質の試験結果も報告されており、空気中の粒子に付着して飛ぶ放射性のヨウ素やセシウムにおいて、各カートリッジの浄化水に、ND(非検出)との結果が示されています。
外形寸法 | 130mm×160mm(全高260mm) |
重量 | 1.2㎏ |
ろ過材交換時期 | 1日10L使用で12ヶ月 |
カートリッジ | ストラクチャード・マトリックス |
ろ過水量 | 約3.8L/分 |
除去項目規格 | 除去物質試験検証済み / 航空宇宙産業の品質マネジメントシステム「AS9100」を取得 / ANSI/NSF53認証 |
出典:https://www.granddukes.com/
浄水器比較まとめ
NSF認証を獲得している浄水器はいくつかありますが、NSF認証の中でもPFASの主な汚染物質であるPFOA及びPFOSの除去を目的とした規格はNSF認証P473「飲料水処理装置・PFOS及びPFOA(Drinking Water Treatment Units- PFOS & PFOA)」のプロトコルに規定されています。
したがって、上記の浄水器の中では、唯一「マルチピュア Aquaextra」のみが、NSF認証P473を取得しており、PFAS除去に重きを置くのであればこちらの製品を選ぶのが安心です。
(国内ですと、NSF認証P473を取得している浄水器は、マルチピュアの他に、アムウェイの「eSpring浄水器Ⅱ」がありますが、連鎖販売取引(≒マルチ商法)の疑いを持つ企業さんなので、除外しました。)