日本ではリンゴや桃、梨のような果樹としてあまり馴染みのないザクロ。
おまけに種が多くて硬く、食べにくく、そもそも食べ方もよく分からない方も多いのではないでしょうか。
しかし近年、ザクロのポリフェノール等の抗酸化成分が再注目され、肥満防止、糖尿病予防、血管疾患への予防、高腫瘍性(抗がん性)など、様々な効能があることが分かってきました。
それにともなって、トルコやイスラエルなどの国の生産量が急速に伸びてきました。
今回は、ザクロの特徴や歴史を学び、また効果的にザクロの健康効果を得られるザクロジュースの作り方を紹介したいと思います。
この記事でわかること
ザクロの栽培の歴史
ザクロ栽培の歴史は古く、紀元前2200年頃古代メソポタミア文明のシュメール(現在のイラク・クウェート)で、栽培の記録が残っています。
また、主な原産地はイランやトルコなど中近東で、現在はアメリカ、トルコ、スペイン、中国など様々な地域で栽培されています。
日本には平安時代に中国・朝鮮から入ってきて、当時は薬用として使用されていました。
江戸時代中期頃より観賞用として花ザクロ(果樹がならない種)が栽培され、明治時代以降、大正時代には盆栽として各地で盛んに栽培されるようになったそうです。
現在の日本では庭木として、あるいは観賞用として庭先で見かけることはあるものの、商業的農作物としての主な産地はありません。
日本でザクロが食用として栽培されない理由としては、種子が多く果肉が食べにくく、特に日本在来種のザクロは種子が硬いことで知られています。
果樹の種を嫌煙する日本人には合わないのかもしれません。
また、ザクロの結実のための開花時期にあたる5月下旬から6月が、日本では雨季にあたるため、受粉に適さないことも一因でしょう。
ザクロの品種と特徴
ザクロはミソハギ科ザクロ属の落葉樹。
日本では5月下旬〜6月に花が咲き、9月下旬から11月上旬に果実の収穫になります。
ザクロの品種はじつに様々ですが、一つのザクロ実のなかに数百から数千個の「アリル(種衣)」と呼ばれる赤い粒が入っています。
日本では100g程の果実がみのり、薄い赤、もしくはピンク色の硬い種を持つ品種が多くみられます。
アリルの数が多い方が果実が大きい傾向があり、海外の品種では1kgを超えるものもあります。
日本のスーパーに並ぶザクロは、米・カリフォルニア産や、イラン産が多く、200g〜500g程の大きさで、日本の庭で見られる品種より大きめです。
降水量が多い日本では、ザクロが成熟して皮が硬くなる前に裂果(ザクロが割れて裂ける)することも多く、皮は厚く、酸味が強いのが特徴です。
酸庭先で実の割れたザクロを見かけることも多いですよね。
良質な、美味しいザクロを栽培するには、気温の高い長い夏であること、さらに海抜1600メートルの土地が適しているそうで、イランの乾燥した土地と、大きな寒暖の差が品質の良いザクロを作るための理想の条件なのだそうです。
スーパーで並んでいるイラン産のザクロは皮が薄くて大きく、味は酸味に加えて甘みも感じます。さらに種子も柔らかいので種も食べられるなど、食用として非常に高品質のザクロなのです。
ザクロの健康効果、抗がん作用とは?
さまざまな研究により、ザクロにはさまざまな病気の予防効果があることが分かっています。
高血圧をはじめ、抗酸化作用や、抗発がん作用があることが実証されており、特にザクロジュースは、赤ワインや緑茶よりも強力な抗酸化作用を持つことが示唆されており、酸化ストレス、フリーラジカルの軽減から体内の炎症を抑える治癒効果があるそうです。
ザクロの種子による「アンチエイジング」
ザクロの種に含まれる「プニカ酸」は、他の果実にはないザクロの種にのみ含まれる成分で、強力な抗酸化作用を持っています。
プニカ酸は皮膚の再生を促し、保湿力を高める作用、さらにコラーゲン生成をサポートし、皮膚の弾力性を再生させるなど、さまざまなアンチエイジング効果を持つと言われています。
また、非常に強い抗酸化力から、アメリカではプニカ酸による癌治療の研究も進んでいるそうです。
ザクロ果汁の最強「ポリフェノール」
ザクロ果汁には、血液中のコレステロール量や中性脂肪量を低下させる抗メタボ成分のエラグ酸を主体とした豊富なポリフェノールをはじめ、アスコルビン酸(ビタミンC)、クエン酸などの有機酸も含まれています。
果汁中に含まれるポリフェノールの一種であるカテキンは高い抗酸化作用に加え、殺菌・抗菌作用を持ちます。
フラボノイドの一つ「アントシアニン」「エラグ酸」はザクロの赤色の色素を作り、降圧効果の他、骨粗鬆症の抑制、さらに強力な抗炎症作用から、フリーラジカルによる老化・発がん抑制が期待できます。
またいくつかの研究によると、ザクロの果実から抽出した成分が、前立腺がん、乳がん、肺がんなどの治療に効果があるとされています。(下記参考文献)
参考
「ザクロ抽出物は、核因子κB依存性のメカニズムを通じてアンドロゲン非依存性前立腺がんの増殖を阻害する」
「前立腺がんの化学予防および化学療法のためのザクロ果汁」
「ザクロ抽出物はヒト前立腺がん細胞の増殖、異種移植片の成長、浸潤を強力に抑制する」
「マウス乳腺臓器培養におけるザクロ果実抽出物の乳がん化学予防特性」
「ザクロ果実抽出物は肺癌細胞の生存促進経路と無胸腺ヌードマウスの腫瘍増殖を阻害する」
ザクロの皮は危険?
ここまでご紹介したように、ザクロの果実は多くの効能を持ち、さまざまな疾患の予防や治療に役立つということが分かりました。
しかし、スーパーフードとしてのザクロも、その果皮に含まれる「ペレチエリン」という成分は非常に強い毒性を持っています。
ペレチエリンは、アルカロイド(注)の一種で、条虫(サナダムシ)駆除薬として使われていたこともある有毒成分です。
人や動物に対しての条虫駆除薬において有用である一方、副作用として嘔吐やめまい、下痢などを引き起こすことがわかっており、毒性の強さから現在ではあまり使われていません。
したがって、ザクロを皮ごと食べたり、ジューサーでも皮ごとしぼったりするのは絶対に止めましょう。
アルカロイド: 植物が動物から身を守る自己防衛の手段として、多様な有毒物質を産生し、植物自身が動物に食べられないように身を守る仕組み
ザクロジュースの作り方
<2人分>
ザクロ中(150g〜200g)2個
炭酸水100ml
ライム等の柑橘ひと絞り
ジューサー(必須)
まずは果実の種衣(粒)を取り出しましょう。裂果したところから力を入れると簡単に割ることができます。
皮から引き剥がしながら、粒を取り出していきます。出来るだけ種皮もはがしましょう。
トウモロコシを芯から剥がすように、親指の付け根で粒を押していくとぱらぱら剥がれ落ちます。
2個分のザクロから種衣を取り出せたら、ザルにあけてよく洗います。
水を溜めたボウルにザルを入れてかき混ぜると、ゴミや汚れが浮かんでくるのでよく洗い流します。
ミキサーだと種子ごと潰してしまい渋みが出てしまうので、ジューサーを使います。
ジューサーを使うと、こんな感じで種と種皮をきっちり取り除いてくれます。
出来上がった果汁に適量の炭酸水を入れて完成!
※お好みでライムやレモン果汁を入れても美味しいです。
おすすめ有機のザクロジュース3選
市販のザクロは輸入品が多く高価だし、手に入りにくいという方は、ザクロジュースをおすすめします。
カリフォルニア産のザクロは農薬が使われていることが多く、イラン産やトルコ産のザクロで作ったジュースがオススメです。
その中でも、無添加で農薬不使用のザクロで作った、個人的にも美味しく飲むことができたザクロジュースをいくつかご紹介します。
ザクロのしずく (無農薬・無添加)
農薬不使用のイラン産ザクロを50個分を絞ったザクロジュース。
調整剤、保存剤、防腐剤、着色料、砂糖不使用で、残留農薬検査済み・放射能検査済み商品です。
非常に濃いジュースなので、水や炭酸水で割って飲んでも美味しかったです。
エリートオーガニックザクロジュース (有機JAS認証)
トルコ産の有機ザクロ10.5個分使用した濃縮還元ではないストレートジュースです。
コールドプレスで製造しているため過熱されておらず、果実そのままのフレッシュな香りと高い栄養価を保持したジュースです。
保存料、砂糖、着色料不使用。
野田ハニー 有機ザクロジュース (有機JAS認証)
直輸入のトルコ産の有機ザクロジュース。日本有機栽培認定食品(有機JAS)です。無添加。
濃縮還元ではないストレートなジュースで、非常にフレッシュで果実感が強いです。
他の濃縮還元ジュースのように割らずともすっきり飲めます。