この記事でわかること
深刻な海洋汚染
近年、マイクロプラスチックをはじめ、様々な海洋汚染が問題となっています。
工業廃水や生活用水、製造された化学物質、農業排水に至るまで、あらゆる物質が河川を経由して海を汚染しています。
マイクロプラスチックによる海洋汚染
マイクロプラスチックとは直径5mm以下のプラスチック微粒子のこと。
ペットボトルやビニール袋などのプラスチック製品が、河川から海へ流れ、細かく粉砕されたものがゴミです。また、洗顔料や歯磨き粉など生活用品にも使われており、一度排水として流れると回収は困難です。
国内外の様々な研究によりマイクロプラスチックの海洋汚染が深刻な状況だと分かってきました。
日本は世界でも一人当たりのプラスチックの排気量が多く、米国に次いで世界で第2位。
さらに、コロナ禍で飲食店のテイクアウトが増え、都市部では容器包装の廃プラスチックが急増しているとのこと。
研究によると、様々な飲料水の水源におけるマイクロプラスチックを調べた結果、品質に問題がなかった水は50件中4件であり、およそ92%のサンプルにマイクロプラスリックに汚染されていたことになります。(サンプルにはペットボトルの水も含まれています。)
参考文献:淡水と飲料水中のマイクロプラスチック
海洋中のマイクロプラスチックにおいては、2050年までにプラスチックの重量が、魚の重量を上回ると試算されているそうです。ゾッとしますね。
また、海の表面に浮いているプラスチックはほんの一部で、全総量の94パーセントのプラスチックが深海に沈み、1,400万トンものマイクロプラスチックが海底深くに沈殿し、堆積しているそうです。
ある調査によると、世界の食卓に並ぶ、およそ90パーセントの食塩に、マイクロプラスチックが含まれていることが示されました。
韓国の仁川大学校とグリーンピース・東アジアの共同企画による新たな調査で、世界の塩ブランドの、9割以上のサンプルからマイクロプラスチックが見つかりました
マイクロプラスチックの影響はまだ研究段階ですが、国際社会としてプラスチックの排出量の制限をはじめ、海洋環境の保護が急務であると言われています。
ALPS処理水、または国内外のトリチウム海洋放出
福島第一原発の原子炉冷却に使用された処理水100万トン以上が海洋放出されることが決まっており、その汚染水の放射線の環境や人体への影響が懸念されています。
国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、調査の結果、処理水放出の人や環境に与える影響は「無視できる程度」と述べました。(*1)
また、より広い海域に拡散すれば過去30年間に存在していたトリチウムを下回り、魚介類の摂食に関しても被曝量はごく僅かであると、日本原子力学会の調査で述べています。
ただし、IAEA及び、日本原子力学会は原子力の研究開発や実用化などを推進する機関であることは留意すべきかもしれません。
また汚染水は、ろ過によって全ての放射性物質が取り除けるわけではなく、トリチウムと炭素14は残存するそうです。
アジア周辺各国は、福島第一原発周辺地域で獲れた水産物の輸入を禁止していますが、そもそも国内を含め世界各地の原発からもトリチウム等の放射性物質は放出されており、恒久的な海洋汚染は解決していません。
海水塩は危険?
食塩の安全検査
海に囲まれた日本で生産・販売されている塩のほとんどは海水塩です。
海水から採取した天然塩はカリウム、マグネシウム、カルシウムなどのミネラルが豊富で、海水由来のほのかな甘さがあり、素材の旨みを引き出すと言われています。
海水塩は、海の水から塩の主成分を取り出すわけですから、海洋汚染の影響をダイレクトに受けます。
もちろん、製塩工場では厳格な安全検査が行われており、例えば株式会社日本海水では、100万分の1mmの精度で有害物質をろ過するイオン交換膜が使われ、海洋汚染に対応しているそうです。(=精製塩:後述)
また、塩事業センターでは、2011年から生活用塩製品に対して放射能濃度を定期的に測定し、放射性セシウムのスクリーニング測定を行っているとのこと。
参考文献:食用塩の放射能測定の実際
以上のことから、国内の製塩工場で作られた「精製塩」については、マイクロプラスチックをはじめとした汚染物質の混入リスクはかなり低いと言えます。
食塩の汚染は?
2023年の日本食品科学工学会の研究結果によると、国内の海域で採取された3種類の国産食塩に、20µm以上(*2)のマイクロプラスチックが存在していたそうです。
参考文献:顕微FT-IRを用いた市販食塩に含まれるマイクロプラスチックの分析
とはいえ、前項でも書いたように、国内で流通している精製塩においてはイオン交換膜法で製造されており、100万分の1mm以上の大きさの含有物質を残存させないので、マイクロプラスチックなどの物質による汚染の可能性は低いと言えます。
参考文献:塩中のマイクロプラスチックの分析
天然塩と精製塩
精製塩は身体に悪い?
日本の塩製造の厳格な基準について説明しました。
しかし、安全性において厳格である製塩工場の塩は、精製塩です。
精製塩とは、製造過程において複数種類のミネラルを取り除き、およそ99.5%の塩化ナトリウムによって出来上がった食塩。
精製塩は先述したようにイオン交換膜によって海水をろ過し、真空式蒸発缶で煮詰めて塩結晶を作ります。その工程で、塩化ナトリウム以外のカルシウムやマグネシウム、カリウムなどのミネラルがほとんど失われてしまうわけです。
カリウムは過剰なナトリウムの排出を促し、血中ナトリウム濃度の上昇を抑える効果があります。そのため、精製塩の摂り過ぎは高血圧を招くリスクを大きくしてしまうのです。
安全な食塩の見分け方
前項で、精製塩のメリットとデメリットがわかりました。
ここまで食塩の安全について以下のことが挙げられます。
・国内の食塩の海洋汚染の可能性は低いと言えるが、いくつかの国内外の研究では販売された食塩からもマイクロプラスチックが検出されていること。
・国外の研究結果では多くの食塩サンプルにマイクロプラスチックが残存していること。
・しかし、精製塩はナトリウム以外のミネラルが製造過程で取り除かれているため、日常的に不足しがちなカリウム、マグネシウムをはじめとしたミネラルが失われてしまっていること。
以上を踏まえ、塩の安全性については明確な基準や国家機関による検査が存在しないので、以下の点に注意して塩を選ぶことをおすすめします。
精製塩なら国内製造 ー 外国産の食塩は安全基準が明確に存在しないため。
海水塩 ー 天日塩や岩塩は異物が混入の可能性があるため
天然塩(天日塩・岩塩含む)を選ぶ場合は、しっかり検査されたものを選ぶ
安全でミネラル豊富な塩5選
沖縄の海塩「ぬちまーす」
沖縄の海水100%(宮城島)から採水した、海洋成分の種類が豊富な海塩。
常温瞬間空中製塩法という製法が採用され、多様なミネラルが豊富に含まれています。(2000年ギネス認定)
マイクロプラスチック除去フィルターにより、不検出。
放射能検査済。(0.1Bq/kg不検出)
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 73.34g |
カルシウム | 440mg |
カリウム | 1140mg |
マグネシウム | 3620mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 |
放射能検査 | 検査済 |
宮古島の海の恵み「雪塩」
宮古島の地下海水を汲み上げて作られたパウダー状の塩。
外部委託のマイクロプラスチックフィルターにより、不検出。
琉球石灰岩の成分が溶け出しているためか、豊富なミネラル(特にカルシウム含有量が多い)が特徴です。
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 72.6g |
カルシウム | 832mg |
カリウム | 1000mg |
マグネシウム | 3310mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 |
放射能検査 | ー |
沖縄の海水塩「青い海」
「沖縄の海水塩 青い海」は、沖縄の海水で作られた海水塩です。
マイクロプラスチック残留検査が3ヶ月に1度施行され、2023年5月に行われた検査でもマイクロプラスチックが不検出(検出限界値:1ppm)です。
海水を1μm(0.001mm)から3μm(0.003mm)の細かい目のフィルターで複数回ろ過し、ゴミや不純物を取り除いています。
製造方法は、沖縄最南端にある糸満市の沖合約2kmから取水した海水を平釜で濃縮させ、フィルターでろ過した塩水を釜揚げ・乾燥させます。
ミネラルも豊富で、さらに安全性も高い天然塩と言えます。
また、「青い海」は食品安全マネジメントシステムに関する国際規格である国際規格ISO22000の認証を取得しています。
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 91.1g |
カルシウム | 400mg |
カリウム | 160mg |
マグネシウム | 180mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 |
放射能検査 | ー |
沖縄の塩「シママース」
こちらも、「沖縄の海水塩」と同じ「株式会社青い海」の塩です。
「青い海」同様、マイクロプラスチック残留検査済み。(マイクロプラスチックが不検出:検出限界値:1ppm)
メキシコまたはオーストラリアで作られた完全天日塩を沖縄の海水で溶解し、ろ過したものを炊き上げた塩です。
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 93.2g |
カルシウム | 190mg |
カリウム | 110mg |
マグネシウム | 150mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 |
放射能検査 | ー |
塩田の天日海塩「あまび」
外国産天日塩は不使用の、沖縄の海水だけを原材料にした無添加の自然塩。
日本食品分析センターの試験により、放射能検査済みです。
海水100パーセントで平釜製法で作られ精製されておらず、天然ミネラル豊富。
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 89.9g |
カルシウム | 259mg |
カリウム | 81.2mg |
マグネシウム | 219mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 |
放射能検査 | 検査済 |
海の精「ほししお」
伊豆大島の海水から採水し天日濃縮して作られた添加物不使用の塩です。
ネット架流下式塩田で海水を濃縮し、温室式結晶箱で塩を結晶させて作っています。
多数のミネラルが含まれ、粒が大きくほのかな甘さ・旨味があります。
放射能検査済出荷。製造過程において微細フィルターろ過を施行。
栄養成分(100g) | |
エネルギー | 0kcal |
タンパク質・脂質・炭水化物 | 0 |
食塩相当量 | 92.38g |
カルシウム | 525mg |
カリウム | 157mg |
マグネシウム | 525mg |
安全検査体制 | |
マイクロプラスチック対策 | フィルターろ過 |
放射能検査 | 検査済 |
沖縄の海塩「ぬちまーす」 | 宮古島の海の恵み「雪塩」 | 沖縄の海水塩「青い海」 | 沖縄の塩「シママース」 | 塩田の天日海塩「あまび」 | 海の精「ほししお」 | |
食塩相当量 | 73.34g | 72.6g | 91.1g | 93.2g | 89.9g | 92.38g |
カルシウム | 440mg | 832mg | 400mg | 190mg | 259mg | 525mg |
カリウム | 1140mg | 1000mg | 160mg | 110mg | 81.2mg | 157mg |
マグネシウム | 3620mg | 3310mg | 180mg | 150mg | 219mg | 525mg |
マイクロプラスチック対策 | 検査済 | 検査済 | 検査済 | 検査済 | 検査済 | 微細フィルターろ過 |
放射能検査 | 検査済 | ー | ー | ー | 検査済 | 検査済 |