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発酵の底知れぬ健康効果(2) 乳酸菌と納豆菌

                                   
学び
公開日時:2021/08/18
 
更新日時:2021/08/26
                       

発酵の底知れぬ健康効果(1)発酵のメカニズムと歴史

前回の記事では、発酵の歴史とその仕組みを学んできました。

化学者たちの数々の研究によって発酵は「微生物の存在なしには起こりえないこと」さらには「微生物の持つ酵素だけでも、物質を分解する過程で発酵は起こる」がわかってきました。

細菌 酵母 カビ

肉眼では見えないほど小さな微生物たちの作用によって少しずつ有機物が分解され、別の物質が生成されるわけですが、そのような発酵を促す微生物にも種類があります。

それら微生物のタイプは大きく分けて三種類。「細菌」「カビ」「酵母」です。

今回は微生物の分類をみながら、微生物たちによる多彩な発酵の仕方、そのようなさまざまな働きによって生まれる、バラエティ豊かな発酵食品をご紹介したいと思います。

微生物の第一回目は「細菌」です。

発酵を促す細菌

細菌はウイルスと同様に、人間の体内に侵入し感染症を引き起こす微生物です。

世の中には膨大な種類の細菌が存在しており、その数は判別できているだけで7000種以上と言われています。

中には大腸菌や結核菌など深刻な症状を招く危険な細菌もいる一方、乳酸菌やビフィズス菌のように、消化管や泌尿器に住み着いて腸内物質を分解しながら栄養素を生成する、人間にとって有益な常在細菌(※1)も存在します。

※1 細菌にとって人の体内は適温と栄養素の豊富な好環境なため、微生物の恰好の住処であり、多くの細菌が住み着いています。

細菌

細菌がウイルスと決定的に違うのは、そのような人間に対しての有益性もですが、ウイルスは(細胞を持たないため)宿主の細胞内に入り込んではじめて増殖ができる寄生体であるのに対し、細菌は細胞を持っているので、適切な環境さえあれば糖やタンパク質を栄養源に増殖ができる細胞生物だということです。

そのように細菌は食品に付着すると有機物を糧に代謝活動をはじめ、細胞分裂を繰り返して短時間のうちに増殖します。

そして細菌の中でも、人間の消化作用にはない特別な代謝を行い、効率よく代謝産物を生成してくれるありがたい菌種が以下の三種、「乳酸菌」「納豆菌」「酢酸菌」です。

乳酸菌

ブドウ糖や乳糖などの糖を分解して乳酸を生成する菌を「乳酸菌」と呼びます。(そのままですね。)

乳酸菌が他の菌種と大きく違うのは、大腸菌などと異なり、呼吸によってエネルギーを作ることが出来ない点。そんなわけで乳酸菌の唯一の代謝活動(エネルギーを得るための活動)は「発酵」になるわけです。

チーズ 乳酸発酵

乳酸菌はその発酵作用によって必要なエネルギーを得て、乳酸やアルコール(エタノール)などの生成物を作り出します。

そしてそのような発酵作用を「乳酸発酵」と呼びます。

※2 大腸菌は、酸素がある場合には呼吸、酸素がない環境では発酵でエネルギーを作りだします。
※3 急激な運動で筋肉に過剰な負荷があった際、「乳酸が溜まる」と表現しますが、これは呼吸による酸素の供給が間に合わないときに「乳酸発酵」によってエネルギーを作り出そうとしている様態です。

乳酸発酵の歴史

前回の記事の発酵を巡る論争から100年余り経った20世紀初旬、ロシアの微生物学者メチニコフは、長寿の多いブルガリア地方で人々が日常的にヨーグルトを食べていることに着目しました。

そして、「ブルガリア人にがん患者が少なく長寿が多いのは、ヨーグルトに含まれるブルガリア菌によって腸内の腐敗菌が取り除かれているから」というメチニコフ博士独自の仮説を立てます。

ヨーグルト

世界でいち早く乳酸菌の健康における有用性に注目し、ヨーグルトがヨーロッパで広がるきっかけとなった「ヨーグルト不老長寿説(※4)」。しかし、その後ヨーグルトに含まれるブルガリア菌は腸内に住み着かないことが明らかになり、メチニコフの提唱した「ヨーグルトを巡る長寿説」は一時下火になってしまいます。

とはいえ、「ブルガリア菌で発酵したヨーグルトは、乳酸菌の働きによって腸内の腐敗菌増殖を防ぐ」という彼の理論は、後の乳酸菌研究に大きな影響を与え、ブルガリア菌の健康効果、また近年大きく注目される「プロバイオティクス(※4)」の研究へと繋がっていきます。

※4 人間の身体に有益な働きをする微生物とその活用

メチニコフのブルガリア菌による不老長寿説?

人の免疫や、老化と腸内腐敗について研究を重ねていたメチニコフは、36か国に及ぶ国々の100歳を超えた人口の調査を行いました。

その結果、100歳以上の人の割合は、ブルガリア人は100万人中426人、トルコ人は100万人中318人であったのに対し、フランス人・ドイツ人は100万人中2人、イギリス人・スイス人は1人のみという驚くべき数字を目の当たりにし、メチニコフはヨーグルトの摂取が老化を防ぎ、健康寿命を延ばすのだと確信しました。

乳酸菌を有する食品

生ハム
さて、そんな健康長寿の秘訣・乳酸菌食品は私たちの周りにも数多くみられます。

ヨーグルトはもちろんのこと、チーズ、キムチ、ぬか漬けや、ザワークラウト(ピクルス)、それに生ハムも乳酸菌発酵によって熟成させた食品です。

醤油や味噌などは乳酸菌の他に、「麹」や「酵母」などの微生物も作用して、複雑な香りや味が醸成されます。

由来 食品
乳製品由来 ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料(カルピス等)など
野菜・穀物由来 ザーサイ、各種漬物(ぬか漬け、たくあん等)、臭豆腐、ザワークラウト、発酵茶、醤油、味噌、甘酒など
動物由来 生ハム、熟成ハム、発酵ソーセージ、サラミ、アンチョビなど

食品の製造方法によって乳酸菌が含まれていないこともあります。例えば、浅漬などの漬物類には調味液に漬けて「発酵したような味」をつけているものも多く売られています。

また、乳酸菌の健康効果は、同じ菌種の株であれば食材の違いで効果が異なることもないそうです。というのも、乳製品から検出される乳酸菌は、野菜や穀物からも検出され、逆もしかり。そしてそれらの間に微生物学的性質の違いがないことがわかっています。

乳酸発酵食品の健康効果

ヨーグルト
まだ乳酸菌という言葉ができる19世紀以前の人々は、それぞれの土地や風土に合った発酵乳を飲食し、その培った経験をもって「食品は発酵すると栄養価が高くなり保存性も向上すること」を知っていました。

長い歴史を持つ発酵食品のうち乳酸菌もまた、食品の保存性を高め、旨味を引き出す作用に優れ、「整腸作用」をはじめとした健康効果があることも科学的に明らかになってきました。

そしてそのような乳酸菌の効能は「プロバイオティクス」として今も研究され、多くの健康効果、病気のリスクを軽減させる可能性が次々と報告されています。

プロバイオティクス

多くの乳酸菌は熱と酸に弱く、生きている状態で取り入れても、胃酸などの消化液によって殺菌消化され、そのほとんどが死滅してしまいます。しかし、生きたまま腸に行き着いた一部の乳酸菌は乳酸を生成し、腸内を酸性に保つことで悪玉菌の増殖を抑制します。

さらに、死んでしまった乳酸菌も腸内の善玉菌の餌となりその数を増やす効果があると言われています。

人の免疫細胞のおよそ七割は腸管に集中していると言われているので、腸が人体の免疫機構を司っていると言っても過言ではないでしょう。そしてそのような腸管免疫と密接な関係を持つのが腸内細菌なわけです。

腸内の善玉菌と悪玉菌は、日々生存競争を繰り広げており、何らかの要因で腸内バランスが崩れると(悪玉菌が優勢に傾くと)腸内環境が悪化し体調が悪くなってしまうのです。

そのような腸内細菌のバランスを整え、人の健康維持に貢献する微生物のことを総じてプロバイオティクスと呼びます。

科学的に証明されている効果 整腸作用(※5)
ロタウイルス・抗生物質誘導下痢症改善作用(※6)
乳糖不耐症軽減作用(※7)
健康効果を期待できる事柄・今後さらに研究が求められるもの ヨーグルト、チーズ、乳酸菌飲料(カルピス等)など

※5 参考:Impact of LKM512 yogurt on improvement of intestinal environment of the elderly : M Matsumoto 1, H Ohishi, Y Benno
※6 参考:Immunomodulatory effect and protective function against virus infection of probiotics in fermented milk : Hisako Yasui
※7 参考:乳酸菌のラクトース資化の特徴 : 本田洋之、矢嶋信浩、斉藤忠夫

納豆菌

納豆菌はバチルス属 VAR. NATTOと呼ばれる「枯草菌」の一種で、粘質性があり、生育力の非常に強い微生物。田畑や稲わら、枯草などに生息し、多くはわらに自然発生するため、煮豆を稲わらに包んで保温するとタンパク質を分解して発酵し、ネバネバ成分やアミノ酸を生産して「納豆」ができます。

納豆菌は増殖のスピードが速く、農作物に害を与える病原菌よりもはやく増殖することで、土壌環境を改善させる役割も果たすなど古くから農業にも活用されてきました。

納豆菌の特徴

納豆菌は、酸素のある環境を好む好気性菌で、pHが低い酸性環境でも生存します。熱や乾燥、寒冷状態など菌にとって劣悪な環境下に置かれても、芽胞と呼ばれる殻をつくって生き延びるので、体内に入っても消化液に負けず腸内にたどり着き、腸内環境の改善に貢献します。

しかし菌の中でも最も強いバチルス属の納豆菌は、その頑強な増殖力と環境適応力ゆえに、酵母など、他の微生物を活用している場所(酒蔵や醤油工房など)に持ち込むと、乳酸菌や酵母菌が駆逐され台無しにされてしまうこともあるそうです。

納豆菌の歴史と世界の「納豆」

アジアにおける菌を利用した発酵食品は、先に紹介した乳酸菌による馬乳酒やヨーグルト等の乳製品、麹菌や酵母で作る醤油や味噌がまず最初に思いつきますが、枯草菌による発酵食品が日本の納豆の他にも東アジアに多く存在します。

納豆は日本特有の食物というイメージがありますが、実はネパールやタイ、中国、さらに韓国にも納豆によく似た発酵食品が古くから食べられていました。

大豆

ネパールの「キネマ」は、大豆を柔らかくなるまで煮て潰し、竹の籠の中に入れてバナナの葉で覆い、灰を入れ室温で一晩発酵させた後、天日干しして乾燥させた発酵食品ですし、タイ・ラオスでも、大豆を水煮しトントゥーンという大きな葉を敷いた竹籠に入れて発酵させる食品「トゥアナオ」というひきわり状の大豆食品があります。中国の「豆鼓(トウチ)」や韓国の清麹醤(チョングッチャン)も枯草菌や麹菌等の細菌によって作られる大豆発酵食品です。

さらに、アフリカのサバンナにも豆(African locust bean)を完熟発酵させた納豆菌発酵による「ダワダワ」という調味料があり、イモなどのソースやシチューの調味料として常食されているそうです。

納豆

日本の文献で納豆が初めて出現するのは、平安時代中期に藤原明衡によって書かれた当時の風俗や食文化を描いた書物『新猿楽記』です。そこで「塩辛納豆」という記述があり、11世紀半ばには既に発酵による大豆食品が日本にも存在していたことが伺えます。

ただし、同書物に登場する納豆が、納豆菌による糸引納豆(※8)なのか、麹菌を使った塩辛納豆を指しているのかは不明で、日本の発酵文化における納豆菌を使った糸引き納豆の起源が平安時代であるかは今だ確定されていないようです。

糸引き納豆が明確に日本史に登場するのは、室町時代の文学作品「精進魚類物語」で、作中で納豆は擬人化され、コミカルな登場人物として描かれます。このことからもおそらく15世紀半ばには納豆が大衆の間で親しまれていたと想像できます。

江戸風インスタント味噌汁

江戸時代になると、納豆売りが登場し、細かく切った野菜と豆腐をセットで売り歩き、納豆は朝ご飯の定番となります。早朝に炊いた米飯に「納豆汁」とぬか漬け(漬物)を添えて食べるというのが江戸の一般家庭の定型朝食メニューでした。

納豆汁とは藁苞から出した納豆を刻んだり、すり潰して、青菜や豆腐と合わせて出汁と味噌で溶いたもので、かの千利休も懐石料理の献立に納豆汁を取り入れていたそう。現在でも東北地方の郷土料理として食されています。

このように、「無塩大豆を枯草菌で発酵させる食文化」はさまざまな地域で見られ、古くから保存食として、あるいは貴重なタンパク源として重用されてきました。

※8 現在日本で流通している納豆のほとんどがこの糸引き納豆を指します。

発祥地 食品名 特徴
日本 納豆 稲わらに生息している納豆菌により煮大豆のタンパク質が分解され、アミノ酸や納豆特有のネバネバや香りが生成された無塩発酵食品。
ネパール キネマ バナナの葉やチークなどに住み着いた枯草菌によって大豆を発酵させた無塩発酵食品。カレーなどに入れて食べる。
ラオス・タイ トゥアナオ 水煮した大豆をシダの葉など広葉樹にくるんで枯草菌により発酵させた後、ペースト状にした調味料。ディップや野菜炒めの調味料として利用される。
中国 豆鼓(トウチ) 黒大豆や大豆を麹や枯草菌によって発酵させた味噌の一種。炒め物や煮物などさまざまな中華料理に活用される。
韓国 清麹醤(チョングッチャン) 多種の枯草菌を使い大豆を発酵させ、食塩、唐辛子、ニンニク、ショウガ等を加えた調味料
インドネシア テンペ 煮大豆をハイビスカスやチークの葉で包み、リゾプス ・オリゴスポルスというカビによって発酵させるジャワの発酵大豆。揚げたりスープの具にする
アフリカ ダワダワ ローカストビーン、または大豆を発酵させ団子状にして乾燥させた保存食・調味料。スープ状にして利用される。

納豆菌の健康効果

大豆
納豆菌によって大豆の発酵が進むと、本来の大豆の高い栄養価(※9)に加え、ビタミンK2、ナットウキナーゼの生成され、さらにビタミンB2やポリアミンなどの栄養素が増加し、抜群に健康効果の高い食品に変貌します。

納豆菌の種によっては大豆の3,4倍にも上るビタミンB2、強力な抗炎症作用を持つポリアミン(※10)、そして血栓溶解効果や高血圧の改善効果が報告されているナットウキナーゼ(※11)など、納豆の強力な栄養価は世界中から注目され、健康効果を挙げれば枚挙に暇がありません。

下記の表は、大豆と納豆の100g当たりの含有栄養素の比較表です。ビタミンKやビタミンB2、その他ミネラルなどの栄養含有量が増えているのがわかりますね。

※9 食材としての大豆自体「ビタミン」や「食物繊維」「カルシウム」など有益な栄養素を多分に含んでおり、様々な健康効果を持っています。
※11 参考:Antihypertensive effects of continuous oral administration of nattokinase and its fragments in spontaneously hypertensive rats
※10 参考:Polyamines in aging and disease

※大豆 100gの主な栄養素です

栄養素名 大豆(ゆで)100g当たりの栄養素量 納豆 100g当たりの栄養素量
エネルギー 163kcal 190kcal
たんぱく質 14.8g 16.5g
脂質 9.8g 10.0g
炭水化物 8.4g 12.1g
カリウム 530mg 660mg
カルシウム 79mg 90mg
2.2mg 3.3mg
ビタミンK 7μg 600μg
ビタミンB2 0.08mg 0.56mg
ビタミンB6 0.10mg 0.24mg
食物繊維 8.5g 6.7g
葉酸 41mg 120mg
ナイアシン 0.4mg 1.1mg

※参考:文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」

発酵の底知れぬ健康効果(3)酢酸菌

納豆菌の主な栄養素と効用
栄養素 効能
ビタミンK2

ビタミンKのうち微生物によって作られるものをビタミンK2と呼びます。納豆は世界の食品の中で最も多くのビタミンK2が含まれ、さらに納豆に含まれるビタミンK2(メナキノン-7)は特筆して栄養価が高くいことが知られています。

ビタミンKは血液の凝固を促進し、また血液の凝固を抑制する働きを持つハイブリッドな栄養素。出血が起こった際には血液を凝固させ、通常は血流を円滑に行うために働きかけます。このようにビタミンKは血流の健康において両輪を担う健康に不可欠な物質です。

また、ビタミンKは骨を形成するために必要なタンパク質を生成してカルシウムの吸収を助けるとともに、カルシウムの排出抑制に寄与します。さらに動脈硬化などの動脈疾患や、心臓病のリスクを下げる研究結果も報告されています。(※11,12)

ビタミンB2

大豆に含まれるビタミンB2は他の動物性たんぱく源と比べあまり多いわけではありませんが、納豆菌によって作られる納豆にはビタミンB2が豊富に含まれます。

ビタミンB2は三大栄養素の代謝(エネルギーへと変換される行程)を補助する役割を担い、細胞の再生や粘膜を保護する働きを持っています。それ故に、ビタミンB2は美容と発育のビタミンと称され、成長過程の子供にはとくに重要な栄養素の一つです。

また、動脈硬化の原因、さらに発がん性もあるとされる過酸化脂質を分解する効果を持ち、脳卒中や心臓病の予防も期待できます。(※13)

上記でも言及したように、ビタミンB2は体内に過剰に蓄積した糖や脂質を燃焼させ、代謝を促進させる働きもあるため、糖尿病の予防、そしてダイエット効果にも寄与します。

さらにアルコールの分解も促進させ、お酒の飲みすぎによる肝臓の負担を減らし、また脂質を効率よく代謝させるため、疲労時のエネルギー物質供給を効率よく行い疲労回復にも役立ちます。

葉酸

葉酸はレバーや葉野菜に多く含まれる栄養素ですが、熱に弱いためそのほとんどが加熱調理によって失われてしまいます。そのため、葉酸を効率的に摂るためには生野菜のサラダや納豆が適しています。

葉酸はたんぱく質やDNAなどの核酸の合成を促し、細胞分裂による新陳代謝や成長を担う重要な成分です。そのため、子供の発育、また成人においても皮膚や口腔内等の粘膜の健康を保つための不可欠な栄養素です。

また、妊娠中の胎児に起る神経管閉鎖障害(※14)の予防とリスク軽減のために、妊娠中の女性や、特に妊娠の可能性を持つ女性は積極的に葉酸を摂ることが必要です。

葉酸はビタミンB12とともに赤血球の合成に補酵素として働くため、正常な血液の産生にとっても重要であり、貧血の予防に役立ちます。

そして動脈硬化の起因となるホモシステイン血症を防ぐには葉酸の摂取が最も重要なことが分かっており、さらに血流が維持されることにより認知症予防としても期待されています。

ナットウキナーゼ

ナットウキナーゼは、納豆菌がたんぱく質を分解する際に生成される酵素の一つです。

ナットウキナーゼは、血栓の主成分であるフィブリンを分解し、血栓を溶かしやすくさせて、血管の詰まりを改善させる働きを持ちます。(※14)

そのことにより脳梗塞や心筋梗塞の予防に役立ちます。また、血栓を溶かす作用により高血圧の改善にも効果を発揮します。

さらにナットウキナーゼはLDLコレステロールの低下、中性脂肪の蓄積による脂質異常症を防ぎ、脳梗塞や心筋梗塞等の血液系疾患の予防効果も報告されています。

ポリアミン

ポリアミンはさまざまな生物の細胞に存在する成分で、特に大豆発酵食品に多く含まれます。

生物の細胞分裂に必須の成分で、新陳代謝を高め細胞の老化を予防する働きを持っています。

加齢に伴うポリアミンの供給不足は、細胞の老化、そしてさまざまな身体の機能低下を招くと考えられており、ポリアミンはアンチエイジングや、老化抑制のための成分として多くの研究者に注視されています。(※16)

また、ポリアミンは抗炎症作用を持ち、腸管の抗変異原性の炎症を防ぐなど、老化の要因である慢性的炎症の改善効果も期待されています。(※17)

イソフラボン

イソフラボンはポリフェノール化合物の一種で大豆の胚芽の部分に特に多く含まれる成分です。

イソフラボンは女性の加齢によるエストロゲンの低下が起因とする骨粗しょう症や、更年期障害など、ホルモンバランス由来の症状を緩和することがわかっています。

さらに、味噌汁のイソフラボン摂取量が多いほど、乳がんの発症リスクが減少するという研究結果もあります。(※18 しかしサプリメントによるイソフラボン摂取が乳癌発症リスクを減少させるという明確なエビデンスはなく、また、高用量のイソフラボン摂取の安全性についての証明はされていないため、厚生労働省はイソフラボンのサプリメント服用は1日30mg以下を推奨しています。)

イソフラボンには広く知られているように、アンチエイジングや美肌作りにも効果的です。イソフラボンは上記のエストロゲンを補完し、コラーゲンやヒアルロン酸の生成を促進します。紫外線や過度な運動によって発生した活性酸素は肌の細胞を損傷させ老化現象を促進させます。高い抗酸化力を持つイソフラボンは、 それらの酸化ストレスに対し有効に働くことが期待されています。

カリウム

カリウムはヒジキや海苔、切り干し大根をはじめ、豆類やイモ類に多く含まれる栄養素です。カリウムはナトリウム(塩分)の吸収を抑制し、尿への排出を促すため、血圧を正常に保ち、高血圧の予防に効果があります。

また、ナトリウムとカリウムは心臓機能や筋肉機能に関わっており、筋肉の正常な収縮や神経伝達において重要な役割を担っています。


※11 参考 Geleijnse JM, Vermeer C, Grobbee DE, et al. Dietary intake of menaquinone is associated with a reduced risk of coronary heart disease: the Rotterdam Study. J Nutr. 2004;134(11):3100-3105. (PubMed)
※12 参考 Cassidy-Bushrow AE, Bielak LF, Levin AM, et al. Matrix gla protein gene polymorphism is associated with increased coronary artery calcification progression. Arterioscler Thromb Vasc Biol. 2013;33(3):645-651. (PubMed)
※13 参考 Effects of riboflavin deficiency on growth and glutathione peroxidase system enzymes in the baby pig (PubMed)
※14 参考 Association of soy and fermented soy product intake with total and cause specific mortality: prospective cohort study(theBMJ
※15 参考 Combined nattokinase with red yeast rice but not nattokinase alone has potent effects on blood lipids in human subjects with hyperlipidemia(PubMed
※16 参考 Longevity in mice is promoted by probiotic-induced suppression of colonic senescence dependent on upregulation of gut bacterial polyamine production (PubMed)
※17 参考 Symbiotic polyamine metabolism regulates epithelial proliferation and macrophage differentiation in the colon. (Nature Communications
※18 参考 Soy, isoflavones, and breast cancer risk in Japan (PubMed)

参考文献

「乳酸菌の話」 著:百瀬洋夫 / 伊藤寛
「ヨーグルトをめぐる食文化の経営人類学的研究」 著:ヨトヴァ・マリア
「プロバイオティクスとして用いられる乳酸菌の分類と効能」 著:辨野義己
「微生物利用研究領域 発酵細菌ユニット」 著:木村啓太郎
「納豆のルーツを求めて」 著:原敏夫
「ネパールの麹「マーチャ」と大豆発酵食品「キネマ」」 著:新国佐幸、Tika Karki
「アジアの大豆発酵食品」 著:出川洋介
「納豆菌」 著:永井利郎
「無塩発酵大豆と豆鼓考」 著:伊藤寛

Marei Suyama

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